湖に移る月
シアン
きっかけ
「久しぶり!翔太郎君!」
それは偶然の出会いだった。
俺は仕事の疲れから立ち飲みの居酒屋で酒を飲んでいた。
彼女もおそらくそうだったのだろう。
「え⁉もしかして、3年B組の...」
恐らくそうである。しかし、名前を間違うと大変であるからぼかしておいた。
「そう!美月だよ!」
やはりそうである。彼女は俺の好きな人であった。
オフィスカジュアルで良い会社なのか、家に帰ってから来たのか分からないが、可愛らしいワンピースを着て、髪をハーフアップにしていた。
その髪は黒く艶やかで、ふわっとしていた。
筋の通った鼻、猫のような可愛らしい目は相変わらずであった。
「隣いい?」
高校時代の好きだった人と酒が飲める機会なんてめったにない。
「もちろん」
即答した。
彼女は隣に立ち、生ビールと枝豆を頼んだ。
格好に合わないような注文だな...そう思った。
「ねぇ、会社帰り?」
美月が聞いてきた
「そうだけど」
「会社ここらへんなんだ。」
「いや、家がこっちに近いから、ここによく来る。」
「家の最寄りここらへんなんだ」
「まぁ、そう。駅から少し遠いけど」
「へぇ。私も家の最寄りここなんだ。」
そんな会話をしていたら、美月のビールと枝豆が来た。
「せっかく出会ったんだし、乾杯しない?」
俺らは久しぶりの再会に乾杯をした。
俺らは酒を飲みながら、仕事がどうだの、高校の同級生がどうだの、そんな話をしていった。
ふと思ったのか、酒で判断が誤ったのか、俺は聞いてしまった
「そういえば、美月って彼氏いたりするの?」
「ん?いるよ?」
まぁ、こんなに可愛ければいるだろう。俺は少し落胆した気持ちを慰めるよう、そう考えた。
「...でも、最近、冷たいんだよね。」
美月は悲しそうな、寂しそうな声で言った。
俺は何を思ったのだろう
「俺で良ければ慰めるけど」
「ふーん、そういう事言っちゃうんだ」
「言うよ」
「優しいからそういう事言っちゃうんでしょ」
「優しい?」
「だってクラスでも翔太郎君みんなにやさしかったじゃん」
「それはそうかもしれないけど」
「けど何?」
「俺は美月のことが好きだったし」
「ふーん」
美月のその目は熱っぽい目をしていた。
それからのことは早かった。
会計を済ませ、そこら辺のホテルに行き、やることをやった。
偶然の出会いが甘い何かになるのに時間はかからなかった。
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