弱音を吐けないレディース総長が、俺の前でだけ泣くんですケド…脈ありってことでいいんですかね?

国府春学

第1話 怖いとこに転生、しちゃいました……

 わたくし堀田高峰(ほりたたかみね)、不良とは縁のない人生を送ってきました。


 暴力の時代、先生も生徒をガツンと殴り、校内暴力で長ランのヤンキーが優等生をボコったりしているのを横目に、わたくしだけは穏便にやり過ごそうと常に算段していたものです。

 やんきー、こはいこはい。


 さういふわけで、深慮に深慮を重ねていたわたくしですが、1999年に恐怖の大王が降ってくるという説をあまりに繰り返し見すぎたのと受験ノイローゼが重なり、1998年の暮れにとうとう、思い余って首を吊ってしまったのでありますよ。


 しかし。


 人生はまだ、続いていたのであった。

 目が覚めたら、そこは今までと似て非なる世界でして。

「おい、大丈夫か?」

 いかにもな金髪ロング、目の上をグイッと濃く縁取ってツケマをつけた、怖そうなお姉さんが覗き込んでくる。

「ひぃっ」

「何だ、ビビるなよ。あたしはアリレイ。有、礼、と書く! 夜露死苦!」


 わぁぁ。

 なんかわたくし生まれ変わっちゃってるし。

 ここどこ?

 日本……っぽいけど日本じゃないですね。


「アンタ、どこ中? このへんじゃ見かけない顔だね」

 アリレイさんは、ドピンクの改造バイクの前に、いわゆるは、排せつしゃがみをなさって、倒れ伏しているわたくしを凝視している。


 建設業の方が履いてるような紺色のニッカボッカに、金色の字で「最強」とかなんとか刺繡してある黒い特攻服、よく見るとけっこう可愛いお顔立ちで、ぼりゅーみぃなお胸にさらしを巻いていて、ぎゅむむと寄った谷間が強調されている。覆われてるのは胸だけで、へそ出し、腰のあたりまでお肌。

 赤い口唇。大きな二重の目。

「わから…ないです…」

 どこ中?とかそもそも初対面で訊いてどうなさるのか。


「とりあえず名前は、堀田高峰と申します」

 自己紹介は大事。

「偏差値は……な、ななじゅうご、です…」


「ななじゅうごぉ? ならじゅうぶん、戦えるな」

「はいぃ?」


 頭脳と戦い、いったい何の関係が!?


「まぁいい。とにかく、ついてこいよ、高峰」


 わたくしは突然呼び捨てにされ、強引にバイクの後ろに乗せられてしまいました。


「しっかりつかまってろよ!」

「はぃい~!!」

 ぎゅんぎゅんに飛ばされるので、わたくし初めて、女性の腰に抱きついてしまいました。

 ヤンキー、こはい…。

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