第2話 女子として見てほしいんだけど
私が悠斗を呼び出したのは、もう我慢の限界を超えたからだ。
放課後の屋上。風が強い。髪が顔にかかる。
私――佐伯萌は、柵に寄りかかって街を見下ろしていた。
悠斗が来る。階段を上がってくる足音。
昨日から、あの言葉が頭の中でリフレインしている。
「萌は女子っていうより……幼なじみ?」
「そういう対象じゃない」
胸が、痛い。
小学生の時から、私は悠斗が好きだった。
いつも一緒にいて。当たり前の存在で。
でも、いつからか「特別な人」になっていた。
中学で、悠斗が他の女子と話しているのを見た時。
初めて、嫉妬を知った。
高校でクラスが離れた時。
初めて、寂しさを知った。
そして今年。やっと同じクラスになれて。期待していた。
なのに。
「対象じゃない」。
足音が近づく。
深呼吸。笑顔を作る。泣いちゃダメ。怒っちゃダメ。
「来てくれたんだ」
私は振り返った。悠斗が立っている。申し訳なさそうな顔。
「ごめん、昨日は……」
私はそれを遮った。
「ねぇ悠斗」
「ん?」
「私、女の子なんだけど。それ、分かってる?」
悠斗は戸惑いながら答える。
「そりゃ分かってるけど……」
私は一歩近づいた。
「本当に? じゃあなんで『女子じゃない』って言ったの?」
悠斗は言葉に詰まる。
「いや、お前は……幼なじみだから」
私は笑った。
でも、目は笑っていない。自分でも分かる。
「幼なじみだったら、女じゃないんだ?」
「そういうわけじゃ……」
「じゃあ何?」
私の声が震える。
「私、悠斗にとって何なの?」
悠斗は答えられない。
風が吹く。髪が顔にかかる。
いつもなら、悠斗が払ってくれた。
でも今日は、払ってくれない。
そうか。もう、そういう関係じゃないんだ。
私は深呼吸した。もう、我慢しない。
「証明してみせる」
「え?」
「私が女の子だって、悠斗に認めさせてみせる」
悠斗は困惑した表情。
「え、どういうこと?」
私は振り返りながら言った。
「できなかったら……」
諦める、と言いかけて。やめた。
嘘だ。諦められるわけない。
「そのときは、私が悪いってことだよね」
そう言い残して、私は階段を降りた。
悠斗の声が後ろから聞こえる。
「待てよ、萌」
でも、振り返らない。振り返ったら、泣いてしまう。
*
階段を降りながら、涙をこらえた。
家に帰っても、誰もいない。
お父さんは仕事で遅い。お母さんは部屋に閉じこもってる。
「ただいま」って言っても、返事はない。
夕飯を一人で食べて。
一人でテレビを見て。
一人で寝る。
そんな毎日。
だから、悠斗だけが。
悠斗だけが、私を見てくれる人だと思ってた。
でも、それも違った。
悠斗は、私を「女」として見てくれない。
ただの「幼なじみ」。
校門を出る。いつもの帰り道。
でも今日は、一人。
悠斗と一緒に帰ることは、もうないのかもしれない。
――いや。終わらせない。絶対に。
*
家に着いた。玄関を開ける。
リビングに行く。お母さんの気配は二階。お父さんはまだ帰ってない。
テーブルの上に、メモ。
「夕飯は冷蔵庫。チンして食べて」
私は冷蔵庫を開けた。
ラップのかかった皿。一人分。
チンして、テーブルに座る。
テレビをつける。誰かが笑っている。
でも、うるさい。消した。
静かなリビング。一人で食べる夕飯。
味がしない。
私は、箸を置いた。
涙が、一筋流れる。
悠斗。
私は、どうすればいいの?
*
布団の中で考えた。
明日から、変わろう。
悠斗に、私を女として見てもらえるように。
彩に相談しよう。彩なら、教えてくれる。
スマホを取り出して、彩にLINEを送った。
「明日、相談したいことがある」
すぐに既読がついた。
「おっけー! 何?恋バナ?」
私は少し笑った。
「うん。まぁ、そんな感じ」
「了解!明日、昼休みね」
「ありがと」
スマホを閉じる。天井を見上げる。
悠斗の顔が浮かぶ。あの、困惑した表情。
私は、悠斗を困らせてしまった。
でも。
このままじゃダメだ。
悠斗に、私を女として見てもらわなきゃ。
私は、悠斗が好きだから。
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【あとがき】
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