『菜々美』が『津波』と誤報された時、史上最悪の放送事故が始まった。」
志乃原七海
第1話【菜々美を津波と間違えテロップをだしている。】
スタジオに備え付けられた巨大なLEDスクリーンに、青白い**【緊急地震速報】**のテロップが瞬いた瞬間、佐藤菜々美アナウンサーの心臓が跳ねた。ここは渋谷にある架空の報道専門チャンネル、NFLのニューススタジオだ。彼女はデスクに置かれたコーヒーカップがカタカタと音を立てるのを聞きながら、反射的に背筋を伸ばした。
「ただいま、速報です!」佐藤の声が張り詰める。
「ただいま!地震がありました、強い揺れを感じました、震源地は渋谷、**NFLスタジオ真下**!」
スタジオのカメラがクローズアップに切り替わる。彼女はプロ意識で、落ち着いた表情を作り上げた。
サブ(副調整室)から、フロアディレクター(FD)の田中の怒鳴り声がヘッドセットを突き破ってくる。
**FD(フロアディレクター)田中**:「おい、揺れ収まった!地震情報、速攻で出すぞ!テロップ、速報!頼む!」
佐藤は瞬時にテレプロンプターに目を移した。緊急時の速報用原稿が流れているはずだったが、そこに表示された文字列は、物理法則を完全に無視していた。
**プロンプター:**
**【速報:東海地方を震源としたマグニチュード23.5の地震と津波が発生】**
M23.5? それは地球が原型をとどめない規模だ。そしてその直後には、まるで誰かの悪戯のような内部メモが。
**【菜々美を津波と間違えテロップをだしている。】**
佐藤菜々美は自分の名前を見て、数秒間フリーズした。わたしが津波?
しかし、生放送は止まらない。佐藤はプロとして、目の前の情報を読み上げるしかなかった。
「……現在、入っている情報によりますと」
佐藤は震える声で読み上げた。
「??東海地方を震源としたマグニチュード23.5の地震と津波が?」
彼女は読みながら、画面に表示されたとてつもない数字と自分の靴のサイズがぴったり一致していることに気がついた。
そして、次の瞬間、口をついて出たのは、アナウンサーとして最も不適切な私的な感想だった。
「あれ?わたしのくつのサイズじゃんか?」
佐藤菜々美のパンプスは、いつもM23.5だった。
サブから、FD田中の絶叫が響き渡った。
**FD田中**:「さとうさーん!読むな!それを読むな!マグニチュード2.35だ!ニテンサンゴーだ!小数点一つずれてる!そして、菜々美アナ、あなたの名前を津波と間違えて入力したんだ、技術班が!なぜ、なぜ、その靴のサイズ情報を読んだんだ!」
「だって、プロンプターに出てるからよ!」
佐藤は反射的に言い返す。画面上には、M23.5の数字と、巨大な**【緊急:津波】**の文字。その下には、彼女の名前と責任の所在を皮肉ったかのような内部メモが表示され続けている。
**【菜々美を津波と間違えテロップをだしている、フロアディレクター】**
佐藤は、生放送中であるにも関わらず、深呼吸をした。
「大変失礼いたしました。ただいま、緊急の速報情報に甚大な混乱が生じております。正しくは、震源地は東京湾、マグニチュード2.35。震度1程度の揺れであり、現在、津波の心配はございません」
彼女が必死で訂正を入れている間も、FDの田中は泣き叫んでいた。
**FD田中**:「おい、菜々美のテロップを消せ!津波じゃない!これは、佐藤アナの靴のサイズなんだ!…いや、違う、違う、M2.35だ!とにかく津波を消せ!NFL史上最悪の誤報になるぞ!」
佐藤菜々美は、プロフェッショナルな笑顔を貼り付けながら、この前代未聞の放送事故を乗り切るため、次の原稿へと目を向けた。
『菜々美』が『津波』と誤報された時、史上最悪の放送事故が始まった。」 志乃原七海 @09093495732p
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