第6話 逃走者と追跡者②
俺たちはリリーを連れて、孤独な逃避行を始めた。
所属する秘密傭兵組織〈ミスリル〉の協力を
俺は情報部員に電話をかけ、インパラの処分を依頼した。
「スクルド4からドラウグへ、インパラを解体屋に持っていって」
「私は便利屋ではないが。インパラSSは回収しよう」
コードネームドラウグ。情報部の人間と直接会ったことはない。
声も変声機で変えている。男か女なのか分からない。
パーク高校に用務員として潜入しているらしいが。
サーシャは大通りに車を進めた。
夜のシカゴは帰宅ラッシュの真っ盛り。車が列を並んで信号を待っている。
夜の闇にハロゲンの黄ばみのある光源が広がっていた。
「左に白いサバーバン。フルスモークで怪しいわ」
「やつらの仲間かな? リリー」
「待って。銃は確認できないよ」
リリーの声は少し震えていた。
俺も声には出していないが緊張している。
どこに敵が潜んでいるか、いつ撃たれるかわからない。
後ろに黒いサバーバンはいない。
まだ、追跡者に見つかっていないと考えるのが妥当だろう。
「ジョージ。やつらに見つかれば公園に行く」
「そこで決着をつけよう。サーシャ」
信号が変わって車が動き出すと、サバーバンが窓を開けた。
男が誰かと電話している。
「スクルド4とスクルド7は絶対に銃を向けるな」
サーシャは冷静な指揮官だ。
スクルド4の俺と、スクルド7のリリーは手にかけた短機関銃を膝に下ろした。
「二人とも防弾ベストを着てマガジンを入れろ。時間がない」
リリーと俺はうなづきながら「了解」と返事する。
リリーは防弾チョッキの上にイーグルTAC V2ベストを着た。
俺も防弾チョッキを着てベストを被る。
「オズパークに行く。ジョージは地図を見てくれ」
「わかった。俺が道案内をする」
俺は懐中電灯。それも暗い豆電球で地図を照らした。
カーナビがないと、こんなにも不便だ。
今はスマホ一台で何でもできるのにと、俺は不便さを
魔法使いの像があるオズパークに着いた。
渋滞に巻き込まれ、公園にたどり着くまで時間がかかった。
公園に入ってきたサバーバンから三人の男が降りてきた。
やはり、あの車には敵が乗っていた。
手にはソ連製のカラシニコフが握られている。
俺はブッシュマスター製AR‐15をサーシャに渡す。
伸縮式ストックにM4風のハンドガード、そして古めかしいキャリアハンドル。
さらにロアレシーバーには特徴的なヘビのマークが印字されている。
サーシャが「3分で決める。覚悟はいい?」と言う。
俺とリリーも賛成した。
「ぶちかますよ!」とリリー
三人の敵はサバーバンのドアを盾にして、銃撃を開始。
カラシニコフの激しいマズルフラッシュが光る。
敵は三方向に別れつつある。
適当にマズルフラッシュが光る場所に撃ち返す。
リリーは右から左へと扇状に射撃を加えた。
ウージーから放たれた弾がサバーバンのフロントガラスを割る。
こちらは民間人に被害を出さないようセミオートで撃っているが。
敵はお構いなしにフルオートで撃ってくる。
火力が段違いだ。
サーシャは木を遮蔽物に銃撃を続行。
カラシニコフの着弾で木の幹や葉が飛び散っている。
彼女は正面切って撃ち合っていた。
「マガジン
俺も前進して
ピンを抜いた手榴弾を投げると、男の一人が吹っ飛んだ。
男はよろけながらも拳銃を撃ち続け、何発かが防弾チョッキに命中した。
俺はクラスⅢAの防弾チョッキを着ている。
体に着弾の痛みが走るが問題ない。
マカロフごときの弾では貫通しない。
俺は短機関銃を構えたままゆっくりと近づく。
男はスライドオープンしたマカロフを向けてきた。
残弾はないようだ。
俺はどうしてもトドメを刺す気にはなれなかった。
俺の心が反対している。殺すなと。
俺は「雇い主は」と質問を投げかけて、額に銃を突きつけた。
男は観念したのか、質問にサクサクと答える。
「カーケーベに雇われたストリボーグの一員だ」
「もうすぐ警察が来る。保護してもらえ」
シカゴ警察のサイレンが近づいてきた。
俺はステアーSPPを持って走る。
防弾チョッキの重さが体にこたえて、すぐに息切れした。
俺達はジープに飛び乗って、ドアを閉めた。
車内にはサーシャとリリーが乗っていた。
サーシャは車を勢いよく発進させた。
「ジョージ遅かったね」
「警察に捕まるとまずい。逃げるよ」
オズパークに向かうであろう警察のシボレー・カプリスを見る。
反対車線にパトカーが二台走っていった。
☆
サーシャが地中海戦隊に定時報告した。
敵は『ストリボーグ』と呼ばれる組織だということ。
二日後の連絡で拠点を特定できたとの報告があった。
リリーを一人残して、俺とサーシャはスフィア島に帰ることになった。
「ストリボーグの拠点を潰したらすぐに帰ってくるから。くれぐれも寝坊はするなよ」
「寝坊はするなって、死んだお父さんが言いそうね」
「しばらく護衛任務ね。応援が必要になったら連絡お願い」とサーシャ。
リリーは少し悲しそうな顔をして、下を向いた。
一人で戦うのが不安なのか、孤独が
俺はシカゴを舞台にした映画「ブルースブラザーズ」や「ホーム・アローン」を勧めた。
「映画でも観て気分転換しなよ。フナイのテレビデオあるだろ」
この時代にはDVDもブルーレイもない。あるのはVHSだけだ。
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