洗濯物はまだ乾かない
パルメザン
第1話
洗濯機は喧しく回ってる。あれ、俺色物と白いワイシャツ分けたかな?分けてなかったら困るな。ワイシャツが染まったらゼミのみんなに笑われちゃう。でも、染まったらみんな笑ってくれるかな俺の事。そしたら認識してくれるかな?いや、無理だろうな。これぐらいで認識してくれるならそれよりも早く話しかけてくれるだろうから。
「ねぇ、君ってふざけてるの?」
声が聞こえる。俺は平穏でも良かった。無視されるだけならどんだけ良かったのか。こいつは俺を認識してしまった。無色透明な俺を。喜ばしい事じゃないか元々、俺と言う存在を刻みたかったんじゃないか?目立ちたいんじゃなかったのか?
「はぁ、君って本当に無色透明な青春が望みなの?」
「は?俺はいつでも目立つのが今月の目標ですが??」
「ぷっ、今年じゃなくて今月ってとこが浅ましいよねー」
舐めんなや。先輩でも殴るぞ。流石に女性だからパーでやるぞコラ。
「ははは、パーで殴るって、小学生かよ」
「よーし、喧嘩か!全然買うよ。相手が先輩でもお釣りが来るぐらいには買うぞ。なんなら、お釣り全部募金してやる」
着古してパジャマに降格したTシャツの短い裾を捲る。大人になっても、この浮かび上がるハンコ注射の跡が非常に情けない。
「そんな、枯れ枝みたいな細腕で?てか、君外出てる?大分白いけど?ほら、お姉さんに相談してみな?君のボッチ体質は改善できないけど私なら……ごめん無理だわ。宮崎県以外のチキン南蛮で満足してるやつ擁護するのは無理だわ」
「おい黙れよ。このチキン南蛮ヤクザ」
洗濯機が回る音が響く。ここが、R18の世界ならこのマウント取る先輩をひぃひぃ言わせてやるのだが。うん、流石に剣道5段を襲う気になれない。てか、なんならボコボコにされる結末しかない。某ギャンブル漫画の実写映画ごとく「どうしてでだよぉぉぉ」ってのたうち回る未来が想像出来る。帝⚪︎グループの綺麗な床ならまだしも、このクソ先輩が一昨日ゲロった床を這いずり回るのはごめん被りたい。
「で、結局君は何がやりたいんだい?目立ちたい?それとも友情、努力、勝利のジャンプ主人公になりたい?それか、今流行りのハーレム主人公になりたいのかい?……それなら私が第一ヒロインになるのか。……唐揚げにタルタルソースをかけた料理をチキン南蛮って言い張るど畜生を人生の伴侶にしたくないんだけど、これって私が悪いのかい?」
茶髪に染めた短い髪をくるくると指で巻きながらほざくチキン南蛮ヤクザ。まじで、この先輩のせいでチキン南蛮を居酒屋で頼めなくなったんだが⁉︎
「はぁ、てか今日は帰ってくださいよ。不本意ですが家隣じゃないですか」
「いや、私の豊満な体を求めて野生動物のようになるかと思ったが違うんだな」
「何言ってんだこの貧乳」
「よーし、朝まで飲むか!」
「チキン南蛮ヤクザに加えて酒ヤクザ……すくえねぇよ!」
これは俺、加賀美 佑がチキン南蛮狂でアル中でモラルなんて屁としか思ってないクズの先輩、宝田 檸檬との恋愛ストーリーだ。
……え?俺こいつと恋愛するの?流石に選ぶ権利あるよな?
洗濯物はまだ乾かない パルメザン @sa19980920
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