路上占い、あれこれ㊳【占い師は占い師を口説く】

崔 梨遙(再)

今回は1088文字です!

 僕が夜のミナミで路上占いをしていた頃。


 僕も毎週末、占いをしているわけではなかった。その日曜日の夜、僕は知人と飲んで、終電が無くなってからもブラブラしていた。知人は終電で帰っていた。気付くと、美人の路上占い師さんを見つけた。僕は美人の前に座った。


「あら、あなた・・・」

「お、僕のこと知ってるの?」

「知ってます。同じ路上占い師ですよね?」

「僕のことを知ってくれていたとは光栄やな」

「それで? 今日は何でしょう?」

「お姉さんが美人やから座ったんや。たまには占ってもらう方にまわるのもいいかもって思ってね。」

「では、何を占いましょうか?」

「ほな、僕とあなたとの相性。勿論、男女としての相性」

「・・・最高です」

「おお、具体的には?」

「・・・・・・といった感じです」

「良かった。ほな、飲みに行こうか?」

「ダメです。まだ営業時間です」

「いつになったら自由になるの?」

「・・・夜明けには」

「ほな、夜明けのコーヒーでも一緒に飲もうや」

「ああ、もう、ダメです。占いは終わりです。見料をください」

「なんぼや?」

「3千円です」

「はい」

「占いが終わったので帰ってください」

「ほな、これで延長。1万円。これで1時間か2時間ここにいてもええかな?」

「仕方ないですね。いつまでいる気ですか?」

「お姉さんの営業時間が終わるまで」

「それで、夜明けのコーヒーを私が断ったらどうするんですか?」

「また来る」

「いつまで?」

「夜明けのコーヒーを一緒に飲めるまで」

「・・・何を占いますか?」

「雑談でもしようや」

「何を話すんですか?」

「質問してもええかな?」

「何でしょう?」

「何カップ?」

「それ、簡単に聞かない方がいいですよ」

「聞かなくてもわかるで。Dやろ?」

「Eです!」

「へー! Eなんやぁ」

「もう、あなたはHなんですね」

「正直なだけや。朝まで、あといくら払ったらええの?」

「本当に、あなたはしょうがない人ですね」



 結論から言おう。僕達は一緒に夜明けのコーヒーを飲んだ。そして、朝からホテルに入った。


 プレイが終わって、僕は少しだけガッカリした。占い師さんとHするのは初めてだった。占い師さんとのHって、もっと、なんか、こう・・・神秘的な感じがあるのかな? などと期待していた。その女性占い師は美人でスタイルも良かったが、抱いてみると普通だった。何も神秘的なことは無かった。僕は彼女に聞いてみた。


「お姉さん、僕も占い師やけど、占い師とHするのは初めて?」

「うん、初めて」

「どうやった?」

「普通やった。もっと神秘的な何かがあるかと思っていたのに、普通だった。ちょっとガッカリ」



 『普通』と言われて、こんなに胸が痛かったのは初めてだった。







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