寄せては返す波のごとく……。
本エッセイは、そんな「大きな波」に翻弄されし一人の作家の葛藤が記されたものです。
カクヨムコン。言わずもがな、年末年始の十二月~二月初旬までに開催される、カクヨム最大のお祭り。多くの人々が己が人生に「転機」を呼び込もうと切実なる想いを込めて参加することでも知られる。
当エッセイの作者もまた、「ホラー部門」での参加に想いを馳せ、今年こそは大賞を受賞をと強い意気込みを持っていた。
……だが、そこで想定外の出来事が!
本来は、問題ないはずだった。十月二十日に『睡蓮、願わくば永遠に』の書籍の発売が決定している。でも、カクヨムコンのプロ作家部門に参加するのは「九月末まで」に書籍が出る人間だと規定されていた。だから今年は一般部門で大丈夫なはずだった。
しかし、今年のカクヨムは規定が変更され、書籍刊行されるリミットが「十一月末まで」になってしまっていた。つまり、作者は今年からは「プロ作家部門」に参加することに。
それはまるで、突如潮位を増した「満ち潮」に呑まれるが如く。
『汐海有真』。その名前が既に、この未来を予見していたのかもしれない。海に汐が満ちるかのように、二ヶ月分の時期がずれ込んでしまった。
言うなればこれは、「NORMALモード」でのクリアを目指していたのに、いつの間にか「HARDモード」ないし「NIGHTMAREモード」でしかプレイできないように難易度が固定されたかの如き事態。
プロ作家部門。そこはカクヨムにおける魔境や魔窟、いや、あえて「魔界村」と呼ぶのが正しいかもしれない。そこへ突如挑まされることになり、強い煩悶を強いられる。
本作を読むことで、「プロ作家部門」に挑むにはどんな覚悟が必要か。そして、どんな想いを持って挑むことになるのか。その「当事者」としての感覚がありありと伝わるようになっています。
カクヨムコンの空気を知る上での資料としても、そして純粋に読みものとしても楽しい仕上がりとなっているので、是非ともご一読下さい。