第3話
「貴方のせいで…私の子は死んだのよ!」
「……」
俯き聞くことしかできない僕。
「まぁ、あの子が…」
「よくものうのうと生きてられるわね…」
僕に聞こえるような音量で喋ってる人たち。
でも、光がある。
「美波さんッ!」
美波さんは近所の人たちに囲まれ尻餅を着いていた。
「ああ…誰かと思たら、人殺しのお子さんかいな…」
「へ?」
美波さんがそんなこと言うはずがない。だって、だって!
「 ちょっと仲良うしてあげたら、えらい気に入られとるみたいで、ぶっちゃけ迷惑な話やわ 今日も、そのせいでウチが傷つけられたんやけど。」
違う………違う…違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!
美波さんがそんなこと言わない!言うはずがない。
そうわかっていても、頭では嫌なことが横切る。
いつもの美波さんと違う僕を見る目。
僕のことを軽蔑しているようなその目。
本当に美波さんは僕のことを嫌っていたら?
大人は感情を偽ることも嘘をつくことも普通にできるんじゃないの?
もし、もしも…僕のことを本当に迷惑だと思っていたら?
「いや…違う…僕は、」
「いやぁあああああああああああ」
僕は、叫んでいた。よく見ると、ここはベッドの上だった。
「夢…か」
あまりにも、鮮明に覚えていた。
だから、僕は美波さんに謝りに行こうと思った。
美波さんの住んでいるマンションのインターホンを押した。
ピンポーンと周囲に鳴り響いた。
『はいは〜い』
美波さんの声がした。美波さんはいる。
「あのっ!」
『あぁ奏多くんか。ちょい待ってな。今ドア開けるし』
僕は、安堵した。美波さんはいつもと変わらない。昨日あんなことがあっても。
「美波さん。来たよ」
僕は、今にも口から出てきそうな心臓を押さえ付けて行った。あくまでも平然を装うように。
「良かったぁあ。昨日、あんなことあったさかい、もう来てくれんと思ってたわ」
美波さんは、美波さんだ。
それだけで、涙がドッと押し寄せてきた。
「うぇ⁉︎どしたん?何かあったん?大丈夫?」
オロオロする美波さんを見て、僕は笑ってしまった。
「ふふふっ。あははは!」
「えぇえ?なんで笑うん?」
楽しいなぁ。美波さんといると。
タンシンフニンで帰ってこないお父さんとより、
「ずっと一緒にいたいな…」
不意にぽろっと出た言葉だった。
気にせずに流してくれてもよかった言葉だったのに、美波さんは違った。
「……その言葉、ずっと待ってたん。イホーってわかっとっても一緒に行きたいんや」
「え?」
僕は、驚きが隠せなかった。美波さんも僕と一緒に?
「一緒に行くとしても、お金も何にも出せないよ?」
僕が、心配して言っても、美波さんはどうってことないように自慢げににっこりと笑って言った。
「ウチね、小説書いててなヒットしたんやで。奏多くん養うくらいの貯金はあるし収入源も仰山あるで?」
確かに…と僕は思っていた。一人暮らしにしては広すぎる都内の部屋。いいPCやインクの汚れ、小説家っていうことにもフィットしていた。
「ほんとに、いいの?」
「ええんやで。せやけど、お父さんには、しばらくしてからちゃんと話そうな。でも、これはホンマの話やからな。ウチが、奏多くん、君のこと守ったるから。不自由な思いなんかさせへんし、必要最低限どころか、最高の環境、ちゃんと用意したる。な?やから、一緒に行かへん?」
「ウン!」
こうして、僕は母親という呪いを美波さんという美しく強い素敵な女性に解かれた。
不幸の後はちゃんと幸福が待っているっていうのは本当だったと思った。
「あなたは美波さんを妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「あなたは奏多さんを夫とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、貧める時も貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすと誓いますか?」
「ええ。誓います」
「では、誓いのキスを」
僕は、永遠にこの人を愛する。
それは、彼女が欠けても揺るぐことはない。
【3話完結】僕と貴方と 瀬戸川清華 @Setogawaseika
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます