電話対応・来客対応


 新しい職場で初めてとった電話は外線だったのだが、私の頭の中は真っ白になった。

 周りが騒がしくて、相手の声が聞き取れない。その上、相手側は慣れているのか早口で喋るものだから理解が出来ず、メモをとる手も追いつかず思わず無言になってしまった。

 黙り込んでしまった私に相手は不審感を抱いたようだったので、私は慌てて、


「……すみません、もう一度お願い出来ますか?」


 とお願いしつつ、相手の言葉を何度も繰り返して、つたないメモをとった。

 そんな私のおろおろした様子を見た上司に苦言を呈されてしまったが、返す言葉はなかった。



 では内線はどうか? 外線よりも難易度は低いと思われがちだが、これにもつまずいた。

 内線の時はかける時も、受ける時も所属部署と名字を言う決まりがあるのだが……私は結局一度として受話器の向こうの従業員が告げるそれらを聞き取れたことはなかった。


 外線と内線、そのどちらも私の耳には言葉として聞こえていなかった。



 以前の職場でも電話対応で頭が真っ白になりかけることが稀にあった。だがその時は看護師さんに電話を代わってもらったり、相手の電話番号が表示されるタイプの電話だったので後からその電話番号をネットで調べたりして、


「ああ、あの電話は◯◯会社からかかってきてたのか。ならばあの電話の意味は□□だったのか。ならこうすればいいんだな」


 という感じで、他の情報を使って分からないことを補っていた。



 そして新たな職場で新たに苦戦したのは来客対応。

 以前の職場では、患者さん以外で訪ねてくる業者や施設の人達は、やって来ると必ず名刺を渡してくれた。私はそれを受け取り1人しかいない先生に声をかけるだけだったのだが、新たな職場では違った。

 まず、名刺が貰えない。口頭で会社名や名前、取り次いでほしい相手や用件を喋るので聞き取りきれない。以前と違い、取り次ぎ先が沢山あるのでそれも混乱に拍車をかけたのだった。

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