第17話公爵夫人としての誓い

旅から戻ったクラリティとガルフストリームは、公爵家の屋敷でこれまでの日々を振り返る時間を持った。形式的な結婚から始まった二人の関係は、旅を通じて大きく変わり、今では互いにとって不可欠な存在となりつつあった。しかし、これから本物の夫婦として歩んでいくためには、新たな挑戦が待ち受けていることも、二人には分かっていた。



---


帰還の歓声


屋敷に戻った二人を待っていたのは、使用人たちの温かい歓迎だった。使用人たちはクラリティの成長を目の当たりにしており、彼女が本当の意味で公爵夫人としての責任を果たし始めていることを知っていた。


「奥様、お帰りなさいませ!」

メイド長の声に続いて、使用人たちが一斉に頭を下げる。その光景に、クラリティは少し照れながらも微笑み、静かに応えた。


「ただいま戻りました。皆さんのおかげで、こうして無事に戻ることができました。」


その言葉に、使用人たちは喜びと尊敬の眼差しを向けた。かつては不安げに屋敷で過ごしていた彼女が、今では堂々とした態度で家を代表していることに、誰もが胸を打たれていた。


ガルフストリームもその様子を見守りながら、小さく頷いた。彼の目には、誇らしさと温かさが浮かんでいた。



---


公爵家の課題


歓迎が一段落した後、ガルフストリームはクラリティを自室に呼び、これからの課題について話し始めた。公爵家の財政は、彼が当主になってから少しずつ改善してきたものの、まだ完全に安定しているわけではなかった。


「この旅を通じて、君も気づいたと思うが、公爵領にはまだ多くの問題がある。」

彼の言葉に、クラリティは静かに頷いた。


「盗賊団のような脅威が再び現れないようにすること、そして領民たちの生活をさらに豊かにすることが必要ですね。」


「その通りだ。だが、それだけではない。貴族間の派閥争いや、他領地との微妙な関係もある。」


彼の話を聞きながら、クラリティは自分が公爵夫人として何をすべきかを考えた。領民の信頼を得るためには、ただガルフストリームを支えるだけではなく、自分自身が積極的に行動する必要があることを感じていた。


「私も、何か具体的にできることを探します。この屋敷でできることだけでなく、領地全体のために役立てるよう努力します。」


クラリティの決意に、ガルフストリームは目を細めた。彼女の成長と覚悟を目の当たりにし、彼は心の中で大きな信頼を抱いていた。



---


領民たちへの思い


その数日後、クラリティはガルフストリームに提案をした。それは、公爵家の領地に住む全ての人々に向けた感謝と、今後の生活を支えるための施策を直接伝えるための「領民への集会」を開くことだった。


「これまでの感謝の気持ちを伝えたいのです。それに、私たちが領民の皆さんの生活を真剣に考えていることを、もっと分かってもらいたいと思います。」


彼女の提案に、ガルフストリームは少し驚きつつも、その意義をすぐに理解した。

「良い考えだ。それに君が話すことで、領民たちも君をさらに信頼するだろう。」


二人は集会の計画を進め、屋敷の庭を使って大規模な集まりを開くことにした。



---


集会の日


集会当日、公爵家の広大な庭には領地中から多くの人々が集まった。クラリティは緊張しながらも、ガルフストリームに励まされ、堂々と人々の前に立った。


「皆さま、本日はお集まりいただきありがとうございます。」

彼女の声は静かだったが、その言葉にはしっかりとした意志が感じられた。


「これまで、公爵家は皆さまの支えによって成り立ってきました。私たちがこうして領地を守り、発展させることができるのは、皆さまのおかげです。」


その言葉に、人々の間から拍手が沸き起こった。クラリティは少し緊張が解けたように微笑みを浮かべ、さらに続けた。


「これからも皆さまが安心して暮らせるよう、公爵家として全力を尽くします。そして、私自身も公爵夫人として、領地全体の発展に貢献していきたいと思います。」


彼女の言葉には、誠実さと覚悟が込められていた。その姿を見た人々は、彼女を真の公爵夫人として受け入れ、歓声を上げた。


ガルフストリームは少し離れた場所から彼女の姿を見つめていた。その眼差しには、これまでにないほどの愛情と信頼が宿っていた。



---


夫婦の新たな一歩


集会が終わり、人々が帰った後、クラリティはガルフストリームと庭に立ち、静かに星空を見上げていた。


「今日の君は素晴らしかった。私が想像していた以上だ。」


彼の言葉に、クラリティは少し照れくさそうに微笑んだ。

「ありがとうございます。でも、私一人の力ではありません。あなたが支えてくださったから、こうして話すことができたのです。」


「いや、君はもう十分に自立している。君が私の隣にいてくれることが、これからの公爵家にとって何よりも大切だ。」


その言葉に、クラリティは胸が熱くなった。二人は互いの手を取り合い、これからの未来を共に歩むことを改めて誓い合った。



---


これまでの形式的な結婚を乗り越えたクラリティとガルフストリーム。二人の関係は、真実の愛と信頼に基づいたものへと変わり、新たな未来へと進み始めていた。この瞬間が、彼らにとって新たな物語の幕開けであり、真実の夫婦としての第一歩となったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る