第11話

俺の計画は、

俺と園田さんの負担をしょうじに分散させ、誰か適当な人材を入職させ、自分達は円満に退職するという内容だった。


しかし、計画通りにはことが進まなかった。


まず、現状、園田さん以外に経理能力がある人材はいなかったし、しょうじはしょうじで、俺を遥かに上回る仕事能力で社長に気に入られた。


そして気が付くと、俺はしょうじにゴーストライターのポジションを奪われていた。その時になって、俺の全存在価値は無くなった。


失意の俺は、やがて仕事を辞め、生活保護を受給し、しばらくしてから精神病院に入院することになった。


そんな今でも覚えていることがある。

それは、俺が職場を後にする最後の日、


「そうか、今日でお別れか。」

と、園田さんは男泣きを堪えてサヨウナラと言わなかった。


2019年初頭、

俺は精神病院のロビーで、ひたすら文章を書き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る