ドールハンター: Doll Hunter
夜凪いと
第0話 Prologue
少女がいる場所はすべてが赤に染まった部屋だった。
壁も、いたる場所を
その中で、赤に染まっていないものが二つだけあった。
一つは、白いワンピースをまとった少女。
春先の芽を思わせる瑞々しい黄緑色のふわふわな長い髪と、宝石のように煌めくエメラルドの瞳を持っている。
もう一つは、天井に描かれた、奇妙な絵だった。
その絵は、朝になると太陽が現れ、夜には月と星へと変わり、時刻を教えてくれる。
何一つ変化しないこの部屋の中で唯一変わる物。特に絵が変わるその瞬間が彼女にとって一番好きな時間だった。
その瞬間だけは生きていると安堵の息を吐ける。
いつの間にか少女は床に寝転がって天井を眺めるのが日常となっていた。
キィィ——……
この部屋に一つしかない扉が開き、誰かの足音が聞こえる。だが、少女は動くどころか、視線すら上げなかった。
「ご飯よ」
「……いらない」
身体のラインがくっきりと出る赤いドレスを着た女性が、少女の横にスープとパンを載せたトレイを置く。そして、腕組みをしながら少女を睨むように見下ろした。
「そうね。君は食べなくても死ななかったわね。でも、空腹くらいは感じるでしょう?いくら『化け物』でも」
「……」
「ちっ」
無反応な少女が気に入らなかったのか、舌打ちをしては艶やかな黄緑色の髪の毛をわし掴みにして引き上げる。
無理に立たせられた少女の、透き通るエメラルドの瞳と、赤いバラを
「まあ、前の餓鬼みたいな態度より今の方がいいけど……ふふっ」
「っ!!」
パシン———!
頬を打たれた大きな音と共に少女の身体は勢い良く床に崩れ落ち、紅の世界に溶けるように動かなくなった。
「もう自分には助けてくれる人なんていないと自覚しなさい。殺す事が出来なくても痛めつける事は出来るから」
高いヒールの音だけが部屋を埋め尽くす。
「じゃあね♡」
キィィ——……
扉が閉まり、少女一人だけ残った部屋に残された。
「そんなことないわ」
冷たい地面に倒れていた少女は身体を起こさず、ゆっくり、ゆっくり顔だけを上げ—————俺を見て笑う。
「待ってるわ—————シグ」
「—————!!!」
それを最後に俺は夢から目を覚ました。
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