第16話 任命式と新たな試練
王都の中心にそびえる白亜の大聖堂。
その鐘楼が高らかに鳴り響く中、僕は長い赤い絨毯を歩いていた。
左右には整列した騎士団、豪奢な衣を纏った貴族たち。
全員の視線が僕に注がれる。
辺境の小さな村で道具を直していた自分が、こんな場に立つなんて――未だに夢のようだ。
壇上には国王が立ち、重々しい声で告げた。
「修繕士リオン。そなたの力はすでに証明された。ゆえに我が王国は、そなたを“守護者”として迎え入れる」
騎士が一歩進み出て、黄金の紋章をあしらったマントを僕の肩にかける。
広間に響く拍手と歓声。
僕は深呼吸し、震える声で答えた。
「……身に余る栄誉です。けれど僕はただ、壊れたものを直したいだけなんです。その力で、人々を守ると誓います」
その言葉に、歓声がさらに大きく広がった。
だが、その空気を切り裂くように、重苦しい声が響いた。
「……ならば、守護者としての力を示してもらおうか」
宰相ドレイクだ。
彼は杖を突きながら壇上に進み出て、冷たい眼差しで僕を射抜いた。
「噂や小手先の修繕では足りぬ。国の至宝を預けるには、さらなる証明が必要だ」
「ドレイク……」
国王が眉をひそめるが、宰相は一歩も引かない。
「この場で“試練”を課す。受けられぬならば、守護者の任は取り消す」
広間がざわめきに包まれた。
「試練……ですか」
僕は思わず聞き返した。
ドレイクが指を鳴らすと、数人の兵が巨大な布に包まれたものを運んできた。
布が外され、現れたのは――黒ずんだ巨大な魔導具。
内部は焦げ付き、歯車は砕け、魔力の結晶はひび割れている。
「《機神兵の心臓》。古代戦争で破壊され、以来一度も動かなかった。これを修繕できるなら、守護者として認めてやろう」
どよめきが走る。
伝説級の遺産を、その場で直せというのか。
(千年前の遺物を……僕が?)
不安が胸を締め付ける。
けれど逃げれば、守護者の任を失い、村を守る後ろ盾も消える。
拳を握りしめ、僕はゆっくりとうなずいた。
「分かりました。その試練、受けます」
宰相の口元に、にやりと冷たい笑みが浮かんだ。
「よかろう……では、見せてもらおう。奇跡の修繕士とやらの真価を」
広間の空気が一層重くなる中、僕は黒ずんだ魔導具に手をかざした。
「――〈修繕〉」
光がほとばしり、試練が幕を開けた。
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