第15話 宮廷の陰謀 ― 修繕士を巡る策謀

 王の宣言とともに、僕は“国の守護者”として迎え入れられた。

 広間の拍手と歓声は耳に痛いほど大きく、場違いな自分に戸惑うばかりだった。


(……これが、王都での僕の立場なんだ)


 けれどその裏で、確かに冷たい視線が僕を射抜いていた。

 宰相ドレイク。

 彼の目は、獲物を捕らえた猛禽のように鋭く、敵意を隠そうともしなかった。


 ◇ ◇ ◇


 その夜。

 宮廷の奥にある薄暗い一室。


 ドレイクはワイングラスを揺らしながら、数人の影と対峙していた。

 黒い外套に身を包んだ者、異国風の衣をまとう者――いずれも表立って宮廷に出ることのない顔ぶれだ。


「……修繕士リオン。確かに力は本物だ。だがあのような小僧に王国の命運を託すなど、笑止千万」

 ドレイクが低く吐き捨てる。


「しかし宰相閣下、陛下はすでに認められましたぞ」

「だからこそだ。――表では従うふりをする。だが裏では、我らが先に“利用”するのだ」


 影の一人が不気味に笑う。

「ほう……つまり、奴を我らの手に引き込むか、さもなくば――」


「排除する」

 ドレイクの瞳が妖しく光った。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。

 僕は与えられた宿舎の部屋で目を覚ました。

 辺境の質素な小屋とは比べものにならない、豪奢な部屋。だが心は少しも落ち着かない。


 窓から見える王都の街並みは美しく、賑やかで、どこか眩しすぎた。


「リオン」

 ノックとともに入ってきたのはロイだった。

 彼はいつもの冷静な顔で言う。

「今日は陛下の御前で、正式に“守護者”としての任命式がある」


「……守護者、か」

 自分には大層すぎる肩書きだと思いながらも、逃げるわけにはいかなかった。


「ロイさん……」

 僕は少し迷ってから、思い切って口を開いた。

「宰相のドレイクさん……僕のこと、嫌ってますよね」


 ロイは短く息を吐いた。

「気づいていたか。あの男は保守的だ。新しい力を恐れ、同時に利用したがる」


「利用……」


「お前は気を抜くな。王都は辺境の村とは違う。ここには笑顔と同じ数だけ、牙を隠した者がいる」


 ロイの忠告に、胸の奥がざわついた。


(……村でのスローライフとは、もう違う。ここでは生き方を間違えれば、すぐに飲み込まれる)


 けれど僕は、心に誓った。

 修繕の力は、人を幸せにするために使う。

 利用されるためじゃない。奪うためでもない。


「僕は僕のやり方で、守り抜いてみせます」


 そう呟いた時、遠くで鐘の音が鳴り響いた。

 王都での新しい一日が始まり、同時に僕を巡る策謀の幕も開こうとしていた。

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