【BL】八英雄の花嫁〜俺男なのに???〜

橋本衣

第1話 俺、男ですよ???



 俺の人生はとても平凡とは言い難い人生である。

 5歳の時に両親、兄姉を亡くし、8歳の頃には祖父母も亡くした。

 俺は天涯孤独、俺と関われば全員が不幸になる。

 そんな事を考えながら生きて来た。そして今日、、俺は養護施設を出る。


結斗ゆいと君、本当に出るの??」


「はい、貯蓄もありますし、高校生になってまでお世話になるのも申し訳ないので、7年間お世話になりました」


「いつでも帰って来て良いからね、ここは結斗君の家でもあるんだから」


「そう言って貰えると、嬉しいです(此処に居ても俺は1人だ)」


 そうして、俺は世話になった養護施設を出た。大切なスマホと服15着、充電器、高校の制服に靴、お菓子数種類、メガネ、お金、髪ゴム、家族写真、7つのミサンガ、薬数種類の入ったリュックや大きな鞄を持って暫く歩く。

 歩いている中で公園に視線を向けると、親子3人の姿が見えた。


「パパ〜、ママ〜、待ってよ〜」


「待ってるから大丈夫だぞ」


「転けないようにゆっくり来なさい」


「、、、パパ、ママ、あのね、大好き!」


「「、、、、パパ/ママも大好きだよ」」


「、、、、家族、って良いな。俺も、家族、、、、欲しい、、、、


 ー結斗が言い切る前、刹那結斗を包み込む様な光が訪れた。下を見れば円状の魔法陣の様な物があったのだー


な」


ビュン


 刹那、俺の体が浮く感覚に陥った。目を閉じ、地面に落ちる痛みを感じた。


「イッタァ、、、、んっ、あれ?」


 俺は目を開けると、そこには、、、、


「初めまして、花嫁」


「???」


 そこには知らない空間に知らない人達に囲まれ、目の前には明らかに外国人と思われる黒いツノを生やした美形が座り込んでいる俺に跪いている。


「あの此処って、、、、ん?花嫁?、ハナヨメ???」


「あぁ、お前は僕の運命の花嫁だ」


「、、、、、、、、はい!?」


 俺は意味が分からず頭で理解出来ず、いや理解出来る分の意味の分からなさだ。

 まず此処何処だって言う疑問もあるし、この人達誰だって言う疑問もある。


「おい、、僕の、じゃなくて、の花嫁だろうが」


 すると、背後からツノの男性の頭を引っ叩くこれまた美形だった。それからまた6人の美形な人達が現れて、俺の事を見つめる。


 俺は少し怖いと思いながらも聞く事にする。


「ぁ、あの此処何処なんですか、それに花嫁って、貴方、達も誰か分かんないし、元の場所に返して下さい、、、、!」


「、、、、まずは、突然此処に連れて来た事を謝罪する。ここは、君の元居た世界とは異なる、ファミーユと言う世界で、俺は10大王国の1つ、人間国の王・ゼンだ。ここは君の世界で言う異世界、だね」


「異世界、?」


「そう、君を何故花嫁、と呼ぶのか。その説明をするのであれば、このメガネをかけて見て欲しい」


「、、メガネ?」


「うん、」


 俺はゼン?、さんに手渡された、赤いメガネをかける。メガネをかけると信じられない光景が視界に入る。


 ー結斗の視界に入った物は赤い糸の様なものが結斗に向かってあるのだ。それが何処から出ているのか、それはゼンを含めた8人の男達からだ。結斗は意味が分からず、後退ってしまうー


「こ、これ、何なんですか、この赤い糸って」


「それは運命の赤い糸。結斗の世界にもあるだろう?それが、俺達と君が花嫁と示す物だ」


「嘘」


「嘘じゃないよ、お前はどう足掻いても僕達の花嫁だ」


「リオ、もう少し考えさせてあげなさい」


「あの、これって、断れたりとか、出来るん、ですか?」


「「「「「「「「無理」」」」」」」」


 男性達にそうキッパリと言われてしまって落胆してしまう。


「で、でも、ぃ、いきなりそう言われて、はいそうですか、って受け入れれる訳ないですし、それに俺、男だし」


「確かにそうだね、、、、1ヶ月時間をあげよう。それで俺達に何の感情も浮かばなければ、元の世界に帰って、俺達の事は忘れさせるよ」


「、本当ですね」


「うん、それにもう1つ君はどう足掻いても花嫁として受け入れなければならない」


「〈俺、どうなるんだろ〉」


 俺はこれからどうなるんでしょうか、、、、





「結斗様、お似合いですよ」


「ありがとう、ございます。あの、様なんて付けなくても良いですよ」


「結斗様はいずれは陛下達の花嫁、妃になられる方でございます。なので様付けは当たり前です」


「ぁ、そうです、か」


 あれから数時間が経ち、この世界の事はメイド長であるナーシャさんが説明してくれた。


 まず、俺に声をかけて来たのが、龍人国の王であるリオさん。身長が260cmと高い、俺が170cmだから90cm差か。


 で、ゼンさんは俺と同じ人族であるがあの童顔の見た目で46歳らしい。


「結斗様はここ連合宮で過ごしていただきます。護衛が必要であれば、お申し付け下さい」


「ぁ、はい、分かりました」


 ナーシャさんがそう言って俺専用の部屋らしい部屋から出て行った。


「ハァ、俺が花嫁とか、意味分かんない、、、、けど、嘘じゃないんだよなぁぁ」


 俺はベッドに倒れ込みながらため息をつく。

 【運命の花嫁】、それはこの世界で言う八英雄と呼ばれる数百年に一度生まれる人達の花嫁となれるのが、俺らしい。


 この世界は男性人口9割、女性が1割と女性が少ないから、男性でも妊娠可能にする魔法がある。何故か女性が生まれることが少ないらしい。

 だけど、俺の場合は花嫁と選ばれた瞬間から、体の中にその、そう言う器官が作られている、とゼンさんに説明をされた。


「1ヶ月、1ヶ月ここで暮らしてあの人達に何の感情、恋愛とかそんな感情が浮かばなければ元の体に戻って元の世界に帰れる、、、、んだよな」


 ーこの時の結斗は揺らいでいた。あの八英雄は勿論此処に居る人々は結斗を必要とし、結斗に優しく接するのだ。それが嘘でもなく本心でしていると結斗は分かっていたからだー


「とりあえず、俺はまずはあの人達をちゃんと知らないと、何も知らずに勝手な判断はしたくない」


 俺はそう心の中で決意をして、行動に移ろうと決めた。

 何故かこっちでも使える様になったスマホを手に持って、部屋を出る。


暫く歩いていると、リオさんの後ろ姿が見えた。


「何処かに向かってる?」


 俺は気になってリオさんの跡を付いていくと、ある部屋に入って行った。少し開けて中を覗き込むと、何か輝いている円盤を見つめているリオさん。

 俺は思わず中に入ってリオさんに話しかける様に近づく。


「何、見てるんですか」


「!、結斗、、、、これはお前の世界の光景、だ」


「ぇ?、ぁ、本当だ」


円盤の中を見つめると、俺の居た街の光景が写し出されていた。


「こっちにある魔法でな、お前の世界と繋げて見れる様にしたんだ。だから、お前の生まれた時から知っているんだ」


「そう、、、、だったんですか。、あの、俺が花嫁になったのって、」


「生まれた時、だよ。八英雄が何なのかは説明を受けて知っているな?」


「はい、数百年に一度現れる厄災を退治、倒すのが各種族の中で8人生まれ、英雄の力を持つのが八英雄、何ですよね」


「そう、厄災と呼ばれる怪物は10年以上前に倒したばかりでね、今は平和一択だ。そして八英雄の運命の花嫁は、次元を超えて誕生する。それは1人、たった1人。それがお前だ」


 そうリオさんに言われて俺は実感を覚えれなかった。いきなり花嫁とか、子供産まれる体持ってる、とか言われても分からない。

 でも、この人達は俺が生まれた時から此処から俺を見守って来た、んだよな。


「突然召喚をして突然お前を花嫁にする、そう言ってしまって申し訳ない。だけど、、、、お前を大事に思っている事に1つの偽りもないのは分かってほしい」


「、、、、そこまで言われると、責めれないですよ」


「そうだね、大人気ないな」


「、、、、リオさんのツノ綺麗ですね。黒色だし素敵です」


「、、、、、、、、そうだろうか、僕はこれが嫌なんだかだね」


「え?何でですか?」


「この世界では龍人族のツノは基本白や赤や青なのが殆どなんだ。黒色何て滅多に現れる事のない種族であり、もし産まれれば幸運を与え厄災を吹っ飛ばす力がある」

「そう言い伝えられて来た。だから、僕は昔から周りの人々から崇め奉られてしまって、碌な友人もできなかった。それもあってな、僕はこのツノは忌々しいんだよ」


 ーこの時の結斗は少しリオの気持ちが理解出来た。リオの場合は自分が珍しく幸運となる者なのに、距離が出来て友人が出来ない。そんな環境で生きていたらどんなに良い物でもなければ良いと思うのは普通だろうー


 俺も自分が居たから誰かの人生に影響を及ぼした。俺の場合は距離を作った、その方が良いと思ってた。俺の様な不幸を与えてしまう俺はダメだ。そう思った。


「俺は、リオさんのツノ素敵だと思うし、珍しくて幸運を与えるからと言って、リオさんに対しての対応が変わりませんよ」


「そう言って貰えるのは嬉しいけど、でもいざとなったら、この力で僕を崇める可能性がある」


「俺、誰かの力で幸運になるの、とかちょっと嫌です」


「?、何でだ?」


「だって、幸運とか幸せって誰かから与えられるモノじゃなくて、自分で掴み取るモノです。俺は俺の幸せも俺の不幸もどっちも大切だと思う。リオさんのツノを素敵だと大切に思ってくれる人は居るかもだけど、それをナシにしても着いて来てくれた人は居るんでしょ?」


「、、、、、、、、居る、ゼン達がそうだ。僕のツノを見ても何も言わなかった。普通に接してくれた」


「それに、、、、過去を引きずるより、今を大事にしないと、やっていけませんよ」


「そうだね、、、、結斗は僕なんかよりも余程大人だな」ナデナデ


 リオさんはそう言いながら俺の頭を撫でる。

 俺は少し嘘を付いた。俺は過去に引き摺られて生きている。

 両親、兄姉が亡くなった時のこと、祖父母が亡くなった時のこと、、、、俺は俺が憎いと思いながら生きて来た。


「結斗、他のみんなとも仲良くしてあげてくれ。あの者達は僕の大事な友人なんだ」


「、、、、はい、仲良くします、リオさん」


 俺はそう言ってリオさんの元から離れる。少し振り向くと、リオさんは円盤に手を置いて物憂げな顔をしていた。


次に向かったのは良い匂いのする食堂。そこに居たのは、


「ん、結じゃねーか」


「ぁ、えーっと、ガウルさん?、ですっけ」


「あぁ、殆ど話せてねーから、分かんねーのもしょうがねーよな」


 キッチンの中に居たのは、八英雄の1人、鬼人国の王、氷鬼ガウルさん。その名の通り鬼で尖った2つのツノがオデコから生えている。

 身長は240cmなので、とても高い。


「何で食堂なんか来たんだ?」


「良い匂いがして、それに釣られちゃって」


「あぁそう言うことか。丁度良い、味見してくれないか?」


「良いん、ですか?」


「寧ろしてくれ、、ぁ、それと俺達に対して敬語とか、しなくて良いからな。結にされるとむず痒い」


「、、、、分かりました、じゃなくて、分かった」


「ん、それで良い」ナデナデ

「すぐに持ってくるからちょっと待ってろ」


「、、うん」


 ガゼルさんの大きくて安心する手のひらで頭を撫でられて俺はそう言った。

 体格差も身長差もあるせいか少し懐かしい気持ちになれた。


 そう思っていると何かが乗ったお皿を手に持って俺の所に戻って来たガウルさん。


「オーク肉のニンニクとハーブステーキだ、食べてみろ」


「ぉ、オーク肉」


「ぁ、そうか、結の世界には魔物とか居ねーんだったな」


「居たら居たでビックリストーリーだよ、でも、美味しそう」


「試作品だから、味の感想聞かせてくれ。アレンジとかしたいからな」


「うん、、いただきます。パクッ、モグッ!、、モグモグゥ」


 美味しい、オーク肉の味本来は豚肉なんだけどそれも高級肉で味が濃い。

 ニンニクの味とハーブが良く効いてて、、、、こんな簡単な味付けでも、普通に売れる。多分高級レストランとかに出ても違和感はある。

 と言うか、初めてのオーク肉を普通に食べれる時点で受け入れるの早いな、俺。


「結、どうだ?」


「美味しいです、とっても。ただ、俺から言うと、ニンニク醤油は絶対に合うと言う確信があるな、これは」


「ニンニク醤油???」


「ぁ、、この世界異世界だった」


「醤油と言うのは、結の世界を見て何となく知ってこの世界でも量産したが、ニンニク醤油、とは」


「普通は知らないよなぁ、、、、って、え?量産???こっちの世界にも醤油あるんですか!?」


「あぁ、あっちの世界で観察をして作り方が分かったからな。味噌と言う調味料は作れなかったが、一応マヨネーズもあるぞ」


「意外と役に立ってた円盤様〜。でも、味噌とかなかったら味噌汁飲めないし〜」


「それなら大丈夫だろ、結がこっちに来た時に得たスキルで」


「、、、、ぇ、俺スキル持ってるの!?」


「効いてなかったのかよ、それならハクレンの所行ってみろ、ステータスが確認出来る文字盤持ってるから」


「ゎ、分かった!必ずこの世界に味噌を齎します!」


「ど、おう、頑張れ(料理の事になると年相応の顔しやがるな)」















































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