道化の道ークラウンズ・ロードー
愚者
1章 学院編
第1話 始まりの道ーファースト・ロードー
ある日、父から言われた。
「お前はもういらん。ルーナエ・ルーメン学院に入れてやるから、卒業したら一人で生きろ」
父の声はとても冷たく感じた。
父が僕を「もういらん」といったのは、僕の魔法が無能だからなのだろう。
この世界で人は皆、例外はあるが、属性魔法と一つの固有魔法を持っている。僕もその例外ではなかったのだが、才能がなかった。
属性魔法は火と風しか持っておらず、固有魔法は
物体に魔法を付与するなど、魔力操作を覚えた者ならば、たやすい事だ。
だから、無能。大した固有魔法も持っていない上に、属性も少ない、無能。
秀でているところがあると言えば、魔力量が平均よりも少し多いだけだ。それにしたって、兄弟たちよりも少ない。
貴族の血には才能が眠っている。だから、僕みたいな無能はいらないんだ。
ルーナエ・ルーメン学院行の馬車に乗った時、父から投げられた言葉は人を見送る言葉などではなく、酷く冷たいものだった。
「お前はもう、ロキ家の者ではない。だから、外ではロキ家の名を出してはならんぞ」
この時、僕は本当に家族を失ったのだと知った。
そして今、ルーナエ・ルーメン学院の入学セレモニーが始まろうとしていたのだった。
ルーナエ・ルーメン学院は、
「入学生、起立!!これより、ルーナエ・ルーメン学院入学式を決行する。礼」
新入生、全員そろって礼をする。角度はしっかり45度という、最も美しく見える礼儀のある角度だ。
「学院長が登壇します」
学院長、リーファ・グラメン。種族はエルフ。男。身長は僕と並んだら、鳩とカラスぐらいの差はあるだろう。等級は英雄級。
金の髪を腰辺りまで伸ばし、髪の隙間から出る耳は尖っていて、とても美形で、足は長く、細く引き締まった体つき、指も細く長かった。
そして、白に金の刺繡が施されたローブに、金の木の杖。それらが彼の神聖さを際立てていた。
エルフは人間と精霊の間に生まれた子の突然変異から発症したといわれているが、これはたしかにそう言わざる得ないオーラを纏っていた。
「新入生徒、入学おめでとう。今後の未来を支えるであろう諸君らの入学を心から歓迎する。この学校の教育理論を説明する前に、私がこの学校で成し遂げたいことを聞いてもらおう。私は、神を作りたいのだよ。どうだ?諸君等が感じた感情は、嘲笑か、期待か、好奇心か。もう一度問おう。どのような感情を感じた?」
僕は、恐怖・狂気を感じた。
人が神を作る、それすなわち、神への反逆ではないのだろうか?否、それ以前に自らの手で神を作ろうという考えが浮かぶのが異端なのだ。
いや、もしかしたら才のない僕こそが異端ではないのだろうか?ここにいる人は皆、彼の言っていることに賛同しているのかもしれない。
そう思うと、本当に僕はここにいていいのかが分からなくなってくる。
「今、探求心、好奇心それらの感情を感じた者は魔法の才があるだろう。私は、魔法の才を探求心だと考える。かの有名なニコラス・フラメル。彼は、探求心故にこの世界の魔法技術を向上させた。諸君らも彼のようにあれ。これで私からの話は終わりだ」
学院長の話を聞いて、僕は思った。
やっぱりか。
僕が感じたのは探求とは全く正反対であった。良くないことだと思ったのだ。
やっぱり僕には、表面的にも内面的にも魔法の才はなかったってわけだ。
いっそ、すがすがしい気分だよ。
「では、学年主任からのお話です」
「どうも、新入生の皆様方。私が学年主任のエル・シンだ」
エル・シン。神の寵愛を受けた最強の魔術師。伝説級と言われているが、伝説級の中でもトップクラスで、英雄級に昇るのではないかと噂されている人だ。
「私からはこの学院の教育理念をお伝えしたいと思います。まぁ、この学校の理念は三つ。
一つ、魔法を学び、知識を深める
二つ、新たなる魔法の発明
三つ、世界を騒がす魔術師となれ
以下の三つだ」
この学校はすごい魔術師を作ることしか考えていない。
僕は本当にこの学院でやっていけるだろうか?
そして、入学セレモニーはもう終わりを告げようとしていた。
「これにて、入学セレモニーを閉会いたします。皆様方は各クラスに戻り、先生の指示に従ってください」
そういわれ、僕たち新入生は教室へと向かった。
僕は確か、F組。
クラスに入ると、中にいるものはみんな貴族ではなさそうだった。
きっと、F組には平民が集められているのだろう。
Aから順に身分が下がっていくのだろう。うわさにも聞いたことがある。
そして、Fが最下層になっている。
僕はロキ家から捨てられたから、F組となったのだ。
黒板に書かれている席へと移動した。
「やぁ、俺は金級の【
話しかけてきたのは目の前に座る男だった。
「僕は、ティック・ルナ。まだ、等級はもらってない」
父に僕がロキ家の人間とばれないようにと、偽名をもらった。学園の名簿にも、その偽名が載っているらしい。
だから、僕は平民としての偽名を名乗る。
「そうか、なら先が楽しみだな」
ガオはけらけらと笑う。
「まぁ、最強は俺だがな!!」
自身に満ち溢れた決め顔だった。
あぁ、このガオ・レオスターは最強ゆえにこの学院への招待状をもらったのだろう。
僕とは違うな。
そうだよな。このクラスは平民しかいないとしたら、僕以外、招待状をもらっているのだろう。
そうこうしているうちに、教室のドアがガラガラと音を立てながら開いた。
入ってきたのは、細身で眼鏡をかけた理知的な男性。
その男は教卓に着く。
「どーも、初めまして。私は
男は文字を黒板に書く。書くと同時に、白いチョークの粉が落ちていく。
書かれていた文字は「枢木 華扇」、なんて読むかは分からないが...多分、
「名前と文字からわかる通り、私は華楽出身でーす。さぁ、これで先生のしょうかいはおわりでぇす。なぁにか質問はあぁるかな?」
そこで手を挙げたのは、ガオ。
「どうぞ」
「先生には、俺たちに教えるほどの実力があるのですか?」
「まぁ、まったくなめられたものだね。いいよ、見せてあげる。次はレクリエーションの時間だったし、魔法戦模擬場に行こうか」
この時間から、僕は無能の烙印を押された。
これは、無能と言われたルナティック・ロキが無能と言われた力を使い、世界を見返し、世界の悪となる物語。
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本編:不思議な世界で紡ぐ少女の神話―神々の祝福―
https://kakuyomu.jp/works/16818792440394902157
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