第2話 「東」_前半



 むかし、そこにこそ、それはそれはうるはしき都ありけり。 されど、いくさのわざはひをばまぬかるることあたはずして、 つひに焼けのの原となりにけり。


これぞ祟りのわれらを襲ひしなるべしや。

いまはただ、誰か知る人もなくなりにけるなり――


▼""



 トタン屋根を見上げる。

嫌になるほどまで朱く、そして光を反射していた。


「はぁ……なんでこんな家になったんだろ」


 私はそっと、しかし確実にため息を吐いた。


 この家は、つい最近まで、廃屋だったらしい。

しかも、その廃屋は心霊現象が多発したとかなんとか。


 だから、お気持ち程度に、トタン屋根をこんなにも朱くしたのだろうか。私的には、むしろ逆効果に思えるのだが……


 これからこの家に住むことになるとは、夢にも思わなかった。そう、あれは1年ほど前のこと――


 ――1年前


「■■■〜!ちょっと大事な話があるから降りてきてくれな~い?」


「何〜?母さん。」


「あんた一人暮らししたいんでしょ?」


「え?うん、そうだけど。急にどうしたの?」


「あんた沖縄がいいとか何とか言ってなかったっけ?」


「うん、できればいいなとは言ってたね。」


「でしょ?だから、最近リフォームした一軒家を探してたら……これっ!これ、良くない?」


 私は青白い画面をじっと見つめる。


「いや……これ…」


「え?何かおかしいところある?」


 少し威圧的な雰囲気を纏わせて、私に問いかけてきた。

はぁ、本当嫌になる。この家では、母が最高権力者なのだ。


「いや、なんでもない。」


「そう、じゃあこの家でいいね」


「……うん」



――現在


 ……今思い出すと本当にバカだ。

今もし過去に戻れるとするのなら、全力で自分に向かってビンタをしたい。まぁ、決まっちゃったものはしょうがないので、住むんですけど。


 軽く荷支度を済ませ、とりあえずは住める家になった。


「しっかし、無駄に広い家だな……」


 部屋数も多く、絶対にこの家は一人暮らし用ではないということを漂わせている。


「彼女でも作って同棲しろってことか……?俺にゃ到底無理だとわかるだろうに……」


 まぁ、これ以上は悲しくなるだけなので、一旦少し休むとしよう。

目を瞑り、少し壁にもたれかかった。





 ………風が私の耳にささやき、通り過ぎてゆく。

無邪気に笑いながら走り回る子供達がいた。

子供達は、まるでこれから訪れる現実を知らないかのよう、はしゃいでいた。私は少し、ほほ笑んだ。



 しかし、つかの間。

太陽が黒く染まり、昼間にかかわらず辺りは闇に包まれていく。

子供達は、恐怖のあまり泣き出していた。


 やがて、大砲の音が聞こえ始めた。

ドォーン、ドォーンと轟音を響き渡らせ、子供達は逃げ惑っていた。


 私は、木にもたれ掛かることしかできず、ただ終わりが訪れるのを待っていた。


 ふと、辺りを見渡すと、鎧を着た人達が刺し合い、矢を飛ばしあっていた。私には、思わずソレが子供達の遊びと重なってしまった。


 そして、目の前が朱く染まった時――




「――はっ!?はぁ、はぁ、はぁ……」


 どうやら、嫌な夢を見ていたらしい。

服は汗でぐっしょりしていた。


「本当に、最悪だ……」


 どうして、こんな夢を今見たのか。

いくら思考を駆け巡らせても、応えは出ることはなかった。

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廻る灯りは幻か いみび @Imibi

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