Ver2.■■■ トゥルーエンドのその後
トウアン。
それはアジア随一のサイバー都市。
世界企業CESのお膝元。
最新のオートマトンと、オートマトン技術が普及する世界有数の都市。
天井知らずの富が生まれ、古今東西の享楽を具現化した地上の楽園。
しかし
光があれば、影がある。
富を生むために消耗させられたのは――人の魂だった。
永遠の命、それは無限の労働力。
壊れない身体、それは倫理観を破壊した。
機械生命、それは新たな奴隷の誕生。
富という光が増すたび、影は濃くなった。
残忍さは増し、人々は躊躇を失った。
その悲劇が――ついこの間起きたことだ。
あの事件から一月が過ぎていた。
トウアンは、いつも通りの顔を見せている。
遠くでは銃声が鳴り。
少し近くでは談笑が聞こえる。
些細な痴話喧嘩が聞こえ。
バカが昼間から性に耽っている。
欲望と絶望の底なし沼。
それが、トウアンの顔である。
それが、トウアンの日常である。
嫌になるほど見てきたことだ。
だかしかし、何度も何度も思うことがある。
神に仕えるものだからこそ。
何度も何度も思うことだ。
「なぁ、神様……お前はどうして何も言わねーんだ……」
当然返事は返ってこない。
冷たいビル風が木の葉を揺らすだけだった。
秋は終わり、冬が近づく。
クジは鼻で笑った。
季節の変化。
人々の変化。
目まぐるしく起きる事件事故。
泣き、叫び、怒る。
喜び、抱き合い、安堵する。
どれもこれも特別ではない。
ただの、ありふれた日常なのだ。
―――Ver2.■■■ ありふれた日常 終
―――私は誰? エラーコード:九十九外伝 完
私は誰? エラーコード:九十九外伝 みさと @misato310
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