第2話
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『こんばんはー。フェスタ・ノエラの、今夜もユーカンに! の時間が参りました。いやぁ、暑くなってきましたね。まだ六月なのに』
フェスたんことフェスタ・ノエラの、低くて穏やかな声がワンルームに広がった。
『そうだ。今日は、ちょっと昔の話をするね……』
雑誌や他メディアでも語られたことのある話だ。
フェスたんは、結成二十周年を迎えたヴィジュアル系バンド・FranZ―WaltZ(フランツワルツ)のギタリストである。薔薇色の長い髪と白い肌を持つ、生きた人形みたいな人だ。
英国の名門校に、美術の特待生として進学して、そこでメト・ロドールに出会った。
同い年の彼に誘われてバンド活動を始め、十八歳で初めてギターに触れたのである。
『それまで、音楽にはそんなに興味なかったんだ。当然、絵の道に行くと思ってたし。ネクラで……今でいう陰キャだったし。ほら、場面緘黙症だったって言ったでしょ? 置物みたいにいつもじっとしてたの。でも、バンドやりだして、遅いかもしれないけど青春! みたいな経験して、ヒトになったというか……ならざるを得なかったって感じ』
ククク、とおかしそうに笑っている。
私もいっしょに笑いそうになって、はたと表情筋が止まった。
青春……誰かと何かする経験……ヒトになる、すなわち人間を知るってこと、だったりして。
フェスたんのギターより先に、フェスたんの描く絵や生み出したキャラクターに先に出会ってしまった私は、小学生の頃に漫画家を志した。
彼はなんと、人気アニメのキャラデザもやっていて、ヴィジュアル系の音楽に興味がない人でも、そっちは知っていたりする。
『あー、青春荒野に架かる月、の人ね~』
と、フェスたんの話をするとよく言われる。
月が架かるってなんだよ、とツッこんではいけない。突っ込む前に私は、お小遣いをつぎ込んでアニメの設定資料集やDVDを買い、キャラをせっせと模写していた。気づけば自分もオリジナルの作品を作って投稿して、ジャンルは違うけど漫画家になっていた。
FrantZ―WaltZも好きだけど、どっちかというと私自身は、バンギャというより、フェスたんオタクである。
そこで、だ。
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