第36話 初仕事の終わり

 その後もソレイユ達は魔物を倒して素材を回収していき、日が沈む直前に町へ帰還した。

 結局、請け負った仕事の内容が何だったのかソレイユは最後まで確認しなかった。

 さほど興味もなかったし、倒した魔物の中に標的がいたのだろうと頭の中で結論付ける。


「どうぞ、ソレイユさんの分け前です」


「ああ、もらっておく」


 本日の仕事の報酬。

 リュナから渡されたのは金貨が一枚。

 一般的な労働者が一月に稼ぐ金銭をたった一日で稼いでしまった。


「なるほど、これが探索者か……良い商売だな」


「依頼の報酬だけではなく、他の魔物の素材を売却したお金も入っています。一応言っておきますが、これだけ稼げるのはソレイユさんが優秀だからですよ」


 リュナがどこかぎこちない笑顔で説明する。

 ホームを目指して日が暮れた街を歩きながら、ポツポツと言葉を続ける。


「探索者は命がけの仕事ですからね。当然、それに見合うだけの報酬がなければ釣り合いません。あまり実力のない探索者は町の周りで弱い魔物を倒し、薬草などを採取しているだけなので、そこまでの収入はないようです」


「実力次第というわけか。それは望むところだが……ところで」


 説明に頷いて、ソレイユが話を変える。


「二人とも上の空だな。魔物との戦いにも身が入っていなかったし、そんな感じじゃ命がいくつあっても足りないぞ?」


 ドラゴンと遭遇して逃がしてしまってから、リュナとシノアは目に見えて消沈している。

 その落ち込みようときたら、対人関係に疎いソレイユでさえも簡単に気づけるほどだった。


「もしかして、今すぐにでもドラゴンハートが必要なのか? 誰かがまさに死にそうになって薬が必要とか?」


「いいえ、そこまで緊急性のある話ではありません……ですが、できるだけ早く手に入れたいのです」


 リュナが思いつめた顔で言う。

 真剣な眼差し。硬い表情が深刻さを物語っている。


「了解。それじゃあ、明日にでも竜殺しに行こう」


 ソレイユが重い空気とは対照的に軽い口調で言う。


「ドラゴンハートを手に入れるためにはドラゴンを殺す必要がある。だったら、それをすれば良い。シンプルな話じゃないか」


「それをシンプルの一言で済ませられるのがソレイユさんですよね……」


「頼もしいやら、呆れるやらと言ったところですね」


 深刻な顔をしていたリュナとシノアがようやく笑った。

 やはり、美人は笑っていた方が良い。

 その笑顔を見ているだけで胸の奥がスッキリとした気分になってくる。


「そうと決まれば、ホームに戻って作戦会議をしましょう。おそらく、明日にでも探索者ギルドが討伐部隊を編成するはずです。そこに立候補しましょう」


「私達だけで倒せれば理想ですけど……あちこち飛び回っているドラゴンを我々だけで見つけ出すのは至難ですからね」


「問題はドラゴンハートを譲ってもらえるかですね……どうにか私達の手でドラゴンを倒すことができれば、優先的に素材を譲ってもらえるはずですけど」


「そうなると争奪戦ですね。他の探索者と協力しつつ、出し抜く手段を考えなくてはいけませんね」


 リュナとシノアが口々に言う。

 二人の調子はすっかり戻ったようだ。ソレイユは安堵する。


「難しいことを考えるのは二人に任せよう。俺は戦えと言われたら戦うし、斬れと言われたら斬る。できることがあったら何でも言ってくれ」


 ソレイユが刀の柄を掌で撫でた。

 今日は取り逃がしてしまったが、次は確実に仕留めてみせる。

 ドラゴンであろうと魔物であろうと人間であろうと、立ちふさがる敵は全て斬り伏せてみせようではないか。


「お願いします、ソレイユさん」


「頼りにしていますわ、ソレイユ様」


「任せておけ。大船に乗ったつもりでな」


 美女に頼られるのは不思議と悪い気がしない。

 ソレイユが堂々と言い放ち、唇を吊り上げて笑った。

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呪喰の魔剣士 国中の災いを背負わされて海まで流されたが復讐なんてしない。どうでもいいので最強を志す レオナールD @dontokoifuta0605

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