第9話 博物館

 息も絶え絶えに駐輪所に自転車を突っ込んだ。途端にあふれ流れる汗を拭わなかった。

 河口付近にある市の歴史博物館。そこが指定された場所だった。明治時代に建設されたモダンな銀行が改修されてできた博物館だった。

 まずはその敷地内を早足でグルっと巡ってみた。何も取り立てて仕入れられるような情報はないようだった。

「となれば、中か」

 自動ドアが開く。ひんやりとした館内の空気が、千宙の汗を冷やす。歩くと千宙の靴音が響く。受付まで進んでみた。彼が不審に思っている通りの状況だった。館内には誰一人いない。受付担当も、館内案内も、もちろん観客も。休館日でもないのに、人がいる気配がなかった。一階にある企画展示室や休憩室、ベビールームを駆け巡った。が、結果は変わらなかった。

「ここで、何持って来いってんだよ」

 あの声の無いメッセージに文句が突いて出てくる。

「私がパソコンに送ったメッセージ、どうだった?」

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