第10話 独立
翌日から、教室の空気は一変した。
文化祭での彼女の告白は、あっという間にクラス中に広まった。
いや、クラスどころじゃない。隣のクラス、先輩や後輩にまで噂は届き、学校中がその話でざわついていた。
「裏切り」「最低」「気持ち悪い」――そんな言葉が飛び交うたびに、二人の居場所はなくなっていった。
彼女は机に座っていても、誰も話しかけない。
友達だった女子グループも、彼女を避けるように席を移動していた。
友達も同じだった。男子たちからは「裏切り者」と呼ばれ、部活でも浮いていると噂を聞いた。
昼休みに廊下ですれ違った時、奴の顔には殴られたような痕があった。誰にやられたのかは知らない。でも、ざまあみろと思った。
俺の復讐は、確かに実を結んでいた。
二人は孤立し、泣き、苦しんでいる。
それを眺める俺の胸は、痛みよりも冷たい満足感で満たされていった。
……はずだった。
放課後。窓際で一人になった彼女の背中を見つめていると、不意に胸の奥がざわついた。
肩を震わせ、誰にも声をかけられずに机に突っ伏す姿。
かつて俺が好きだった彼女の面影は、もうそこにはなかった。
俺は望んでいた。彼女を追い詰めて、壊すことを。
でも、本当に壊れていくのを見て、心のどこかが空っぽになった。
「……まだ足りないのか」
思わず呟いてしまった。
復讐は終わったはずなのに、満たされない。
彼女を泣かせても、友達を孤立させても、俺の心には虚無しか残らない。
夜、帰宅してベッドに横になっても、彼女の泣き顔が頭に浮かんで離れなかった。
あの顔を見て、笑うつもりだったのに。
なのに――なぜか胸の奥が重くて、眠れなかった。
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