第一話 不協和音

聖ルチーア学園の広い校庭に、若干のざわめきがあった。梨花と沙都子は、文化祭の準備のために朝早く登校していた。だが、校舎の片隅でひっそりと揺れるヒヤリとする空気を、梨花は感じ取っていた。


「沙都子、聞こえる? あの音……鐘のような、ひぐらしの声と混ざってる……」


沙都子は耳をふさぎながら答える。「聞こえるよ。でも、夢か幻か……」


二人は互いに安心させようとするが、教室の窓ガラスがひとりでに鳴る。ひぐらしの鳴き声が校舎中に響き、窓の外では蝉すら逃げ去ったかのように静まり返る。


放課後、レナからの電話が入る。レナは村に帰ることを提案する。「あの日々の罪と真実、全部向き合いたい」。梨花は躊躇うが、その声の震えを聞いて決意する。これが終わらせる最後の機会だと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る