ひぐらしのなく頃に ー終響ー

パンチでランチ

プロローグ

昭和58年・綿流しから数週間。雛見沢は、かすかながら平穏を取り戻していた。


入江機関の計画は白日の下に曝され、多くの住人が真相を知る。鷹野は拘束され、村人たちはようやく“あの日々”の恐怖から解放されるはずだった。


しかし、梨花には消えない違和感があった。雛見沢症候群の影響で曖昧になっていた記憶の狭間に、“終わっていない何か”を感じているのだ。


沙都子は、梨花と共に東京の聖ルチーア学園へ進学し、新しい生活を始めていた。レナや魅音、詩音もそれぞれの生活を取り戻しつつあった。だが、梨花の夢の中では、毎晩同じ夢が繰り返される――血に染まった村、オヤシロ様の祠、そして消えるはずのない“声”。


圭一は、村の惨劇を小説にして記録しようとしていた。しかしペンを握るたびに、「これは終わりではない」と思わずにはいられなかった。


その夜、雛見沢の暗い森の中、古い祠の前でひぐらしが一斉に鳴いた。遠くの山腹から、不気味に反響する鐘の音のようなものが聞こえる。梨花が目を覚ます。沙都子も同じ声を聞いたという。


終わったはずのループ。だが何かがズレている。


この音が、終章の序曲であると、梨花は恐れを確信した。

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