第三章・第二節 チーム結成

 日曜の午後、重蔵の家のちゃぶ台の上には、ノートパソコンが三台。

 お茶とせんべいが並ぶその光景は――どう見ても、ゲーム会議というより親戚の寄り合いである。


「よし! 今日からチーム結成会議を始めます!」

 胸を張る美羽。小三とは思えぬ司会ぶりだ。


「わし、もうお茶飲んどるが……始まっとらんのか?」


「じいじ、まず名前を決めなきゃダメ!」


 翔が手を挙げる。

「俺、もう考えたよ! “チーム・ミラクル美羽ズ”!」


「えー! なんで私の名前入れるの!?」

「強そうじゃん!」


 ちゃぶ台の向こうで、高校生のタクトが苦笑する。

「じゃあ、俺は“チーム・ブレイジングソウル”とか、かっこいい感じがいいな」


「英語ばっかでわからん……“燃える魂”って意味か?」

「そうそう、じいじ」


 重蔵は腕を組み、真剣にうなった。

「うむ……ワシも考えておったのだが……」


「えっ、じいじも!?」

「“JZ-65”という名にちなみ、“チーム・JZ作戦本部”というのはどうじゃ?」


「じいじ、それ、部活の名前みたい……!」


「では“JZ防衛隊”とか!」

「なんか国を守ってそう!」

「実際、守るのはワシの老眼と名誉じゃがな!」


 爆笑が広がる中、美羽がそっと手を挙げた。

「……“じいじ's Rageず れいじ”ってどう?」


「え? レイジって……怒り?」


「ううん。“レイジ”って、ゲームでは“必殺モード”のこともあるんだよ」


 重蔵は目を丸くしたあと、ゆっくりと笑った。

「なるほどのう……“怒り”でも“全力”でもええ。ワシら、まだ終わっとらんからな」


 翔がうなずき、タクトがキーボードを叩く。

「じゃあ――《じいじ's Rageず れいじ》、登録っと!」


 軽快な効果音が鳴る。


『おめでとうございます!チーム《じいじ's Rageず れいじ》が登録されました!』


「やったー!」

「おお……世界にワシの名が出たのう……」


 湯飲みを掲げる重蔵。

「チームの初陣は、茶で乾杯じゃ!」


「じいじ、それただの“お茶会”だよ!」


 笑いと湯気に包まれながら、彼らの物語は静かに動き出した。

 このチームが後に“伝説のバラエティ枠”と呼ばれることを、まだ誰も知らない。

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