Silent Running(rough mix)

榊琉那@Cat on the Roof

Lock Me

 ・警告


 〇ックスのアカウントが乗っ取られて大変な目にあったとかの話、度々聞きますね。

 大多数の人は他人事で済ませると思いますが、実はそれ以外でも乗っ取りされるという事例もあったりします。今回は、何の前触れもなく起こりうる話をしたいと思います。多少、表現を変えたりしている部分はありますが、基本的にノンフィクションです。茶化さずに読んでもらえると嬉しいです。



 ・予言


 思えば、時々スマホで『流失された可能性のあるパスワードですから変えた方がいいですよ』という感じのメッセージを時々受け取っていたけれど、(別にいいや、自分には関係のない話だ)と思い、大して気にはしていなかった。今思えば、それが間違いだったのだが。面倒くさがらずに細目にパスワードを変更していれば、胃の痛くなるような思いをしなかったのにと思う。そしてある日、何の前触れもなく、一歩間違えれば悲劇となるような出来事が起こるのである。



 ・お伽世界


 スマホの乗っ取りに近い事なんて自分にとっては空想の世界、お伽世界の事だと思っていた。しかし時に唐突に訪れる非現実の世界。最初は何が起こったのかわからず、直面した現実に呆然とすることになる。

 よく利用している密林のサイト。そのサイトで事件が起こる。初めは夜遅い時間に届いたメール。夜遅く届くメールはよくあるので、特に気にも留めていなかった。暫く経ってから確認したメールを見て思考も時間も止まる。(これは何だ?)と。


『パスキーを変更しました』


 そしてすかさず届いたメールに記載されていたのは……、


『メールアドレスを変更しました』


 全く心当たりのないメールアドレスの変更に、ようやく思考回路が動き始めた。これはとんでもない事になったと。



 ・狂パート1


 まずやらなければならない事。勝手に変えられたメルアドを無効にする事。ただパスキーを変更されているため、上手く修正出来るかは、正直な所、不明だ。もう夜も遅い時間だから、誰かにアドバイスしてもらうのも困難だ。仕方がない、チャットGPTを使って方法を聞いてみる事にした。


 まず指示されたのは、他の端末でログイン出来るかの確認。これはパソコンの方で試してみよう。しかしながら、やはりログインは出来ない。ログイン出来ない場合は、ヘルプページから『パスワードを忘れた場合』を選び再設定するという事だが、登録メールが変更されているので、これも難しい。他にも指示通りに色々試してみたが、まるで埒が明かない。自分の精神が焦りで正常な判断が出来なくなりそうだ。今の段階では不正な注文とかは無さそうだけれど、心配でならない。元々、豆腐メンタルなので、夜も眠れなくなりそうだ。こうしている間に何かよからぬことをされたら……。どうすればいい?何をすればいい?


 結論としては、カスタマーサービスに直接連絡してサポートを受けるしかないという事に至った。もう夜遅い時間だから、翌日、ゆっくり休んで冷静さを取り戻してから連絡した方がいいな。



 ・ひとりごと


 翌日、カスタマーセンターへ電話をする。アドバイス通りに 


 ・アカウントの不審な利用確認

 ・ログイン出来るようにする手順

 ・メールアドレスや電話番号等の登録情報を伝える準備


 といった、確認してもらいたい事をメモした用紙を手元に置いた。そして念の為に、最近の注文時の注文番号、登録しているクレジットカードも用意しておく。

 緊張するが、カスタマーセンターへ電話をかけてみる。


「実は、勝手にパスキーとメールアドレスを変えられてしまって……」


 詳細は省くが、確認もスムースに行われ、担当の部署に上手く引き継いでもらえて、至急調査してもらえることになった。確認に時間が掛かるけれど、再びログインが出来るような処理をしてくれるのだそうだ。対応が素っ気なかったらどうしようかと思ったが、その点は杞憂だったようだ。とりあえずは一安心だ。念の為、怪しげな注文があったら対応しないように担当の人に伝えておいた。


 不正なアクセスだとすぐに確認出来たのだろう、翌日には回答のメールが届いた。不正なアクセスで行われた変更は、全て無効にしてくれたとの事。これでやっと安心出来る。

 すぐにパスワードを今まで使っていなかったものに変更。面倒くさくなるが、2段階認証の設定もするようにしたから、多分、大丈夫だと思いたい。勿論、これで絶対大丈夫とは思っていないけれど。これで解決だと思ったわけだが……。



 ・凶暴な悪夢


 問題は解決したわけであるが、どうも腑に落ちないというか、違和感があるというか。どこかで誰かに見られて監視されている、そんな気がしてならない。一体、自分を狙って何の得があるのかも不明だ。勿論、そんな事は無いだろうけれど、一度気になってしまうと、どうにも気になって仕方がない。

 そんな中、疑心暗鬼が深まる出来事があった。たまに買い物をするサイトをネットで繋げようとした時に警告が出された。


「誰かが不正に侵入しようとした形跡があります」


 当然ながら、ここのパスワードも変更した。やはり誰かが狙っている?



 ・トラスト・ミー


 こうも頭の痛くなるような事態が続くと、気分転換をした方がいいと思い、映画でも見に行く事にした。地元でも一ヶ月遅れで見る事が出来るが、やはり大好きなグループのドキュメンタリー、更にIMAXだから音もいいはず。1週間のみ、しかも平日の午前中の時間帯しかない。迷ったけれど、折角の休みだから、思い切って行こうと決心。バイクに乗って駅まで行き、そこから電車とバスで目的の映画館へと向かう。

 映画は100%の満足感ではなかったとはいえ、充分に楽しめるレベルだった。これで気分が晴れればよかったのであるが、そうは問屋が卸さなかった。


「バイクが無い!」


 確かに駅前のバイク置き場に置いたはずのバイクが無かった。周りを見回してみたが、いたずらで移動されてもいなかった。周囲をもう一度見ても、やっぱり見当たらない。何故、自分のバイクだけ?やはり自分が狙われている?映画の事が吹っ飛んでしまった。精神状態はおかしくなるばかりだ。


 しかし、それは自分の空回りだとすぐに気づく事になる。警察を呼び一緒に現場検証をするのだが、「この辺りでそういう盗難ってまず無いんですよね」との警察官の言葉。(自分の事を信じてくれよ)と思ったが口には出せない。

「もしかして北口に置いたって事はないんですか?」との警察官の言葉に従い向かってみると、そこにはバイクが置いてあった。いつもならやらないような完全な思い違いに平謝りだった。やはり狙われているというのは幻想なんだなと目が覚めた瞬間でもあった。



 ・凶暴な街


 あれから数週間、とりあえず平穏な日々は戻ったわけであるが、あれはいったい何の目的だったんだろうと。今後はセキュリティにも気を付けなければと思うのだけれど、今の街には、誰かを騙そうとする怪しげなメールや偽サイトが氾濫している。

 最近では、国勢調査の不備を装って煽る偽メールや、カード会社から登録の電話番号を入力しろとの偽メールが送られてくる。留守番電話には、NTTから2時間後に電話を止めるから連絡しろとの音声が入力されている。冷静に考えれば、こんな連絡なんてしてくるわけではないとわかるのだが、そんな事を考える事もなく、騙される人がどれくらいいるのだろうか?平和ボケした人が騙されていく、嫌な世の中になってきたと思うのは自分だけか?

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