第27話 たたき起こせばいい
目を覚ましたカタンに改めてサンドワームの討伐への協力を依頼するとボタンが村長を呼びに行き、村長を含めた数人が彼の家へやってきた。本来なら村長宅でとなるところなのだけど、カタンが怪我のため彼の家で緊急会議開催と相なったのである。
議題はもちろん砂の悪魔サンドワームのこと。まさか一流の冒険者がこのような寒村を訪れてくれるとは、と村長が滂沱の涙を流していたのが印象に残った。 対する俺たちは彼の言葉を否定するでも肯定するでもなく受け流したのは言うまでもない。敢えて言うなら旅行者だけど、一応同じ砂漠地帯に住んでいるから旅人ってのも少し違う。
「それで、害ちゅ……砂の悪魔は今も村人が監視しているのですね」
「そうでござります。物見に案内いたします故、何卒」
村長が深々と頭を下げたまさにその時、甲高い鐘の音が鳴り響く。
俺たち以外の全員が蒼白になって、身震いしつつも立ち上がる。つられて俺とエルナンも床に降ろした腰を上げた。
「お二人の勇者殿、奴がきましたでござります」
「誰か物見まで案内していただけますか?」
彼らの只事じゃない様子からして、サンドワームを発見しただけじゃないことは明白だ。遠目にサンドワームを発見した場合、まだ慌てる時間じゃないだろ?
となれば、村へ真っ直ぐに向かってきているとかの緊急事態に違いない。
「わたしが案内するー」
ボタンが俺の手を掴むも、村長のおつきの女の子にやんわりと引き離された。危ないものな、仕方ない。引き離された彼女はぷくーっと膨れていて可愛い。
村長のもう一人のお付き……こちらは若い鬼族の男が、俺たちを案内してくれた。
「こちらです」
走る彼についていくと、湖の畔に木材で組まれた櫓が立っていた。
櫓には二人の鬼族が詰めており、一人がひたすら鐘を鳴らし、もう一人が監視を続けている様子。
「あっちだ。あと数分で村に侵入する!」
叫ぶ監視の男へ村長のお付きが礼を述べ、俺たちの方へ向き直る。
「この道を進みましょう」
「このまま真っ直ぐでしたら、俺たちだけで行きますよ」
そう申し出るも、彼も付き添うことになった。村のことなので自分たちも前線に、とかそんなことを言いながら。
木々の隙間を抜け、草原に出ると視界が開けた。オアシスは広くないので外に出るのもすぐだな。
さて、サンドワームはどこにいるのだろう。
砂原に向け目を凝らす。目を凝らす……む、むむ。
「分からん。サンドワームは巨体だから砂煙でも上がってるのかと思ったけど」
「クリス殿、あちらです」
ついてきてくれた鬼族の若者が指し示す方を見るも、イマイチぴんとこない。
砂が動いているそうなのだけど、正直言われても分からん。
「え、ええと」
「申し遅れました、アッシュです」
「アッシュさん、サンドワームは地中どれくらいの深さにいるのかまで分かります?」
「5メートル以上は潜っていると思います」
少なくとも5メートルか。そこまで潜っていたら移動していても分からんで当然だ。
物見の村人もアッシュも凄まじい観察眼を持っている。こういう人が三日月湖の物見に立ってくれたら、三日月湖の城壁の中なら定住できるようになるかもしれない。
「エルナン、5メートルだとまともなダメージは入らないよな」
「1メートル……せいぜい2メートルくらいまでだろうね」
加速すりゃもう少しいけそうな気はするけど、せいぜい驚かせるくらいにしかならないよな。
いや、待てよ。
「エルナン、魔力供給を頼む。マーモ出てきて」
『箱を開けるモ』
忽然と姿を現したマーモットにアッシュがひっくり返りそうなほどのけぞって驚いていた。
事前にマーモットが出てくることを伝えておけばよかったよ。
「アッシュさん、更に少しだけ驚かせるかもだけど、サンドワームを倒すための魔法なので」
「は、はい。クリス様は魔法使いだったのですね」
「はい、そうです。こちらのエルナンも同じくです」
「魔法使いがお二人……このような寒村に良くぞおいでいただけたものです……!」
魔法を使う素質のある者は多くはないけど、稀というわけじゃあない。ただ魔力持ちで魔法を使う素養があっても、実際に魔法を使いこなすとなると数が相当少なくなる。図形魔法は体系的に学び、修練に励まないとまともに使いこなすことができない。もう一方の俺が使う精霊魔法は修練不要、座学も不要である。
しかし、精霊魔法の素養のある者は極々稀だ。なので、魔法使いが二人ってのはこのようなへき地の村じゃあ驚かれても不思議ではない。
以前も魔法のことを説明した気がするが、細かいことはいいんだよ、うん。
「マーモ、頼む、開錠」
砂漠の細かい粒子であってもブロックにすれば硬く固まる。
次から次へとブロックを作り、積み上げていく。
これにて簡易高台が完成だ。
放心するアッシュを新たに作ったブロックの上に引っ張り上げ、エルナンが彼に続く。
ブロックをくっつくと離れる属性で上へと引っ張り上げ、高台の頂上へ降り立つ。
さあて、始めるぞ。
「アッシュさん、砂の悪魔の場所を示し続けていただけますか?」
「は、はい……あ、あちらです」
「ありがとうございます。よっし、適当に打ち込んでみる」
ブロックが粉々になってもよいので、力一杯ブロックを加速させ、地面にぶつける。
ズウウウン。
砂海が柔らかいため、大した音は響かなかったものの、物凄い砂煙があがった。
ダメージが入らないにしろ、サンドワームをビックリさせる作戦開幕である。
と思ったら、ブロックの衝撃の数倍はあろうかというほど砂が盛り上がり、ばざああっとサンドワームが顔を出す。
「お、一発で出てきた!」
音と衝撃でドンドコやれば地上まで跳ね上がってきたらラッキーくらいに思っていたが、まさかの一発でうまくいくとは。
このチャンス、逃さないぜ。
ドガアアアアアン
サンドワームの頭にブロックがぶち当たり爆散する。
地上ならサンドワームといえどもブロックの質量攻撃にはなすすべがなかった。
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