第2話 3つの力

☆工藤那奈サイド☆


私は瀬尾先輩の彼女だった幼馴染さんを決して許さない。

幼馴染さんが自殺に追いやった彼を今度は私が幸せにする。

貴方が地獄に落ちる番だ。

そう思いながら私は横を歩いている瀬尾先輩を見る。

瀬尾先輩はまだ困惑している様だった。

それはそうだろう。


だけど。


「先輩。大丈夫ですか?」

「...まあ大丈夫だ。ありがとう。...ただまだ実感が湧かなくてな」

「まあそうですね。先輩は自殺。つまり前世では死んだ筈なので」

「生き返るとは思わなかった」

「まあ生き返ったというよりかは時間を巻き戻しただけですが」

「現にそんな非現実的な真似が出来る時点でおかしいだろ」

「確かにです。アハハ」


それから私は私自身の手を見てから先輩の手を見る。

私は「その、先輩」と聞く。

先輩は「どうした」と私に向く。

私は「手を繋いでくれますか」と言う。


「え?な、なんで」

「私が繋ぎたいので。男の子の手はどれぐらい大きいのか検証がしたいです」

「まあ良いけど...」


私の手を握ってくる先輩。

幸せだった。

そして歩いていると「あれ」と声がした。

私は真顔になる。

先輩を見ると先輩は「...」と複雑な顔をしていた。


「斗真」

「...春か」

「どこ行ってたの?」

「まあちょっと席を外していた」


直ぐに私は手を離してからニコニコする。

初対面なの...で。

いや。

初対面じゃないが愛想良くしておく。


「そちらさんは?」

「...彼女は那奈だ」

「初めまして。工藤那奈です」

「そっか。工藤さん宜しく」


顔を見てみる。

長い黒髪。

私より高い慎重にスタイル抜群。

そしてアイドル級に可愛い女。

だが。


「ふ」


私は少しだけ嘲笑う。

コイツのやった行いを...というか。

この先コイツが地獄に落ちた時が楽しみだ。

そう思いながら私は見ていると「斗真。私、近所のたい焼き屋で買った物があるから渡すね」と取り出す。

すると「いや。いいや」と先輩が断った。


「え?」

「いや。俺今、腹がいっぱいなんだ」

「あ、そ、そっか。じゃあ後で持って行くね」

「大丈夫だ。家族で食べてくれ」

「あ、う、うん」


それからおずおずとたい焼きを仕舞う皆月。

私はその姿を見ながら「...」と考える。

そして横に居た先輩を見る。

先輩は複雑な顔をしていたが直ぐに顔を切り替えてこう聞いた。


「春」

「...ん?何?」

「お前、怪しい事をしてないよな?」

「...怪しい事って?」

「いや。気の迷いで聞いただけだ。すまない」


その言葉に皆月が一瞬だけ目を迷わせた。

本当に一瞬だが見逃さなかった。

私は「...」となりながら皆月を見る。

皆月は「じゃあまた後でね」と言ってから私に向く。


「那奈さんもまた」

「...はい」


それから私達は別れてから駆け出して行く皆月を見送る。

私は「...」と真顔のまま見ていると先輩が「だそうだが」と私に向く。


「1年前から徐々に浸食は始まっていたと思います」

「...そうなのか。それすらも分かるのか」

「千里眼の力で。実は私は泣き叫んで神様に3つの力を貰いました」

「3つの力?」

「1つは千里眼です」

「2つ目は」

「2つ目はどこかの地点で1度しか使えない能力です。巻き戻しです」


私はそう言いながら空を見上げる。

それからふっと笑いながら「行きましょうか」と言った。

すると先輩は「なあ。3つ目が」と私に向いた。


「...3つ目...というか聞いても良いか。お前は...前世ではどういう存在で...そしてどうして俺を救うんだ」

「私は実は前世では黒髪の眼鏡少女でした。それもこんな感じではなく陰キャでしたよ。それが3つ目です」

「え?」

「私、先輩に救われた事がありました。だから私は貴方を救っているんじゃない。恩を返しているんです」

「どこで出会ったのか覚えてない」

「そうですね。容姿もまるっきり違いましたしね」

「...そうなると3つの力はどうやって得た」

「分かりませんね。...ただあの日、雷が鳴っていましたね」

「...雷?」

「雷鳴が聴こえ私は神社に雷が落ちたのを間近で目撃しました。聖なる力が宿ったのかもしれません。まるでそう。よくある異世界転生物である様な」

「...」


私は正直、この力を得た時。

何らかの神様と話をした気がする。

だがそれは覚えてない。

何故こんな力を得れたのかも分からないが。

正直こうなった以上は。


「転生する時にどうも髪の色が抜け落ちたみたいで」

「それでお前はそんな容姿なのか」

「そうですね。...3つの力はただ幼馴染さんを「死ね」と願い続けた結果でしょう」

「...」

「私は先輩が死んで自殺してやろうって思ったので」


それから私は先輩を見る。

先輩は「...」と無言になってから私を見ていた。

私は薄ら笑いを浮かべる。

必ず幼馴染さんは殺してやる、と思いながら。

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