第47話
ナナは大剣を引きずるように持ち、エルに急接近する。地面を捲り上げながら、大剣はエルを真っ二つにせんと振り上げられる。
「よっと!」
エルは地面によって勢いが死んだ一瞬を見逃さず、大剣を踏み付け受け止める。
だがナナは止まらず、エルが乗ったままの大剣を振り上げ抜いた。
「おっ」
「空中なら避けられないでありますね! 勇者流・
「なんの!」
ナナは大剣を何度も振り、刃型の衝撃波を飛ばす。エルは空中で弓を引き、その衝撃波を次々と相殺していく。
そしてエルは無傷で着地する。
「まだまだですねぇ? 本気を出したらどうですか?」
「ナナはいつだって本気であります!」
「ふふ、それはどうですね!」
エルは皮の袋を取り出し、中に手を突っ込んで何かをナナに投げ付けた。それは砂の様で、黒ずんだ粒子が空中にばらまかれた。
「こんなもの!」
ナナが大剣を振り風を起こし、粒子を退けようとする。ナナの大剣が黒い粒子に触れた瞬間、黒い粒子が爆発を起こした。
「ぐっ!?」
「それは火薬です、下手に衝撃を与えれば爆発を起こします」
「こんな威力の低い爆発で・・・!」
ナナは口元を拭い、大剣を握り直す。
すると、エルは一本の矢を取り出して見せた。
「今から面白いものを見せてあげましょう。これは何の変哲もない矢です、これをこうすると・・・!」
エルはさっきの皮の袋に矢を近付ける。するとその二つの物質の間に閃光が走る。
「【融合合体】! 爆弾矢!」
眩い光が収まると、エルの手の中には黒ずんだ矢だけが握られていた。
それを弓にセットし、ナナに狙いを定める。
「食らえ!」
「こんな矢程度!」
ナナの顔目掛けて放たれた矢を、ナナは大剣でいとも容易く弾き飛ばす。しかし、矢の軌跡には黒い粒子が残っていた。
「ナナ!」
俺が叫ぶと同時に、火薬に火がつきナナが吹き飛ばされる。
「ふふふ、私のギフト【融合合体】。触れた二つの物を組み合わせる事の出来る、ただそれだけのギフトです」
「くっ・・・! 仕組みが分かってしまえば!」
「足元、気を付けてくださいね」
ナナが体勢を立て直そうと一歩踏み出した瞬間、足元に刺さったさっきの矢が目に入る。
「ボン!」
エルの合図と共にその矢が爆発する。ナナは上空に吹き飛ばされ、エルは空中で身動きの取れないナナに弓で狙いを定める。
「爆弾矢でトドメです!」
「このっ!」
エルはナナ目掛けて爆弾矢を連射する。ナナは大剣の裏に身を隠し、爆発の衝撃を少しでも和らげる。
「守ってばかりでは勝てませんよ!」
そうエルが勝ち誇った様に言い放った瞬間、ナナが大剣を蹴って更に上空に飛び上がる。
蹴られた大剣はエルに向かって飛んでいき、エルは難なくそれを躱す。
「身一つになってどうすると!」
「こうするのであります!」
ナナが腕を引くと、いつの間にか繋がっていたのか空中に線が現れる。それはナナの腕と大剣をしっかりと結び付けており、ナナが腕を振り抜くと大剣も振り抜かれた。
その大剣はエルの脇腹にぶつかり、エルを大広間の壁に叩き付けた。
「ぐはっ!」
「知恵比べでナナに勝てると思わない事でありますね」
「く、くくく・・・!」
エルは瓦礫の中から立ち上がり、ナナを睨みつける。
ナナは大剣を手に戻し、エルの方に近付いていく。
「これで終わりであります」
「いいや、終わりはお前だ」
ナナが一歩踏み出した瞬間、床のタイルが爆発した。
「くくく、私は吹き飛ばされている最中に様々な場所に火薬とタイルを融合したものを仕掛けた! 歩けば仕掛けた爆発床がお前を襲うだろう!」
「そうでありますか」
煙が晴れると、ナナはなんて事ない顔でケロッとしていた。
そしてそのまま恐れる事もなく、また一歩を踏み出した。
「な、何故歩ける!」
「ナナは魔族。それも悪魔の魔族であります。耐久力や再生力もピカイチ、この程度大した脅威じゃないであります」
「何・・・そうかお前も!」
ナナはエルの目の前に迫る。そして大剣を振り上げ、エルを見下ろす。
「最後の言葉はあるでありますか?」
「・・・ボーディガン様万歳!」
「そうでありますか」
ナナが勢いよく大剣を振り下ろす。その瞬間、ナナの剣がエルの目の前でピタリと止まった。
「なっ! どういう事でありますか!」
「そこまででお願いします」
そう言いながら、大広間に入ってくる。
風が吹き荒れ、ナナの隣に人の形を作り上げる。
「邪魔しないで欲しいんでありますけど?」
「こいつには聞く事があるのです、まだ殺してはなりません」
ナナの大剣をそっと指で抑えたのは、ホバだった。
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追放された『反転英雄』、魔王達をぶっ倒して世界最強に成り上がる〜転生したら貴族家から追放された俺、もふもふ美少女達と最強の冒険者ライフを送る〜 破魔矢 射てまえ太郎 @hmyirme
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