第40話
俺達は人類の領域と魔族の領域の狭間を旅していた。道中出会う魔物達を狩り、調理して細々と数日間食い繋いでいた。
「リーリャン、次の街まで後何日だ!」
「後三日・・・前の街みたいに僕達の噂が広がっていないといいんだけど」
俺達はただひたすらこの狭間の領域を歩いていた。激しい戦いのあった地なのか、地面には草すら生えていない。
あれから幾つか街に辿り着いたが、魔族側は俺達を信用していないようだった。どこも街に入れることすらして貰えず、口も聞いて貰えない。どうやら魔族の街の間で、俺達の悪い噂が広がっているようだった。
「次の街もまた入れて貰えなかったら・・・我は、おかしくなる!!!」
「どうどう、落ち着くでありますよ!」
「次の街は多分大丈夫だ! 僕の情報によると人間との交流も盛んで、僕達みたいな奴らでも歓迎してくれるさ!」
「なぁ、あれってなんだ?」
俺は街の外壁と、並んで見える棒状の旗の様なものに目を凝らす。
近付いてみると街の周囲には即席の壁が築かれており、人間が串刺しになって吊るされていた。
「どうやら歓迎してはくれないらしい」
「あぁ、クソ。次の街はここからまた数日先」
「数日!? 数日と言ったか貴様! 我は今すぐ休みたい! 美味い飯が食いたい! 楽しい事がしたい〜!!!」
「どうどう! 落ち着くでありますよ! そろそろ手が付けられない頃であります」
「落ち着けよサクラ、俺だってキツイ。でももう少し頑張ろう? な?」
「う〜!」
サクラは人間形態のまま地面に四つん這いになり、俺に向かって唸り声を上げた。
その時、一陣の突風が俺達の間を吹き抜けた。
「っ! 誰だ!」
サクラが四つん這いのまま周囲を警戒する。しかし誰もおらず、サクラの目は忙しなく動き続ける。
サクラの動きが止まり、一方向を見つめる。目を凝らすと、遠くから大きな荷物を背負った人影が街に近づいていた。
「・・・!」
サクラは何かを思い出したかのように立ち上がった。そして大きく息を吸いこみ、大声で遠吠えを行った。
「わぉ〜〜〜ん!」
その人物がサクラの遠吠えに気付いたのか、こちらに向かって大きく手を振る。
「ここで会えるとは好都合だ」
「誰だ? サクラの知り合いか?」
「むっ」
ナナのアホ毛が暴れる様にくるくると回り出す。明らかな異常事態にもかかわらず、サクラは平然としている。
「やぁやぁ、お久しぶりですね。フェンリル」
「今はサクラと名乗っている、久しいな。えぇっと・・・」
大きな荷物を背負った青年は、俺達の目の前にまで来て深々と礼をした。
「僕はホバ、風神魔王フォーム様の側近です」
「風神?」
「魔王?」
「フォーム?」
「そうそう、そんな名前だったな! すっかり忘れていた!」
「何せ数百年ぶりですからね」
青年は青い髪をかき上げながら、くすくすと笑った。
「えっと、二人はどういう関係?」
「我が現役バリバリの魔王であった頃出会った、古株の魔王と側近だ」
「その風神魔王フォームはどこにいるでありますか?」
「我が王、フォーム様は風となって世界を回っておられます。僕はその後を着いて回る役割を持っています」
「ど、どうしてだい?」
「それが
「んで何百年とこの世界を歩き回り続けてるんだ、こいつは」
ホバは荷物を地面に下ろし、その中から人数分のカップを取り出した。
「我が王もこの周辺を見て回るそうですので、しばらく休みましょうか。お茶はいかがですか?」
「わ〜いいただくであります!」
「久しぶりに味わえるのか、楽しみだなぁ!」
ウキウキでカップを受け取るナナとサクラだが、俺とリーリャンはホバと名乗った青年を訝しんでいた。
「どう見ても人間だよな?」
「あ、俺も思った。魔族なら目に特徴があるもんな」
「魔族でも何百年も生きられる奴は限られる、それよりも君はお茶飲むのかい?」
「リーリャンは?」
「正直ここ数日の魔物食は精神にくるものがある。魔族は人間と魔物の間の生き物だからね。だから癒しが欲しいと言えば欲しいかな」
「じゃあ俺も飲もう、みんな一緒だ」
俺達もカップを受け取ると、ホバは荷物の中から湯気の立つポッドを取り出した。
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