赤うさぎと七福神
島村 ただし
第1話 トンビと婦人
1 トンビと婦人
・・ピーヒョロロー・・僕は今、空を飛んでいる。何故か、鳥になって空高くゆっくりと弧を描いて飛んでいる。京都市の北区にある上賀茂神社と言う境内の上空だ。境内正面に大きな朱色の鳥居がある。その鳥居の前に緑の芝生が広がって、夏の陽射しにキラキラしていた。
念のため、上賀茂神社について説明すると、上賀茂神社は通称で、古くは賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)と呼ばれ、1994年に、世界文化遺産に登録されている。天武天皇の時代、七世紀(678年)に下賀茂神社とともに創建された、京都最古の神社だ。平安遷都の後、国家鎮護の神社となった。近くに神様が降臨されたと言われる神山と称される山がある。その山を模った円錐状の立ち砂が二つ並んでいるが、近年、パワースポットとして知られるようになった。だが、上賀茂神社と言えば、何よりも葵祭がある。祇園祭、時代祭と共に、京都三大祭の一つとして知られるが、元々、祭りと言えばこの葵祭を指していた。葵祭は正式名称を賀茂祭と言うが、欽明天皇の時代、567年、この上賀茂神社から始まる。
僕はその由緒正しい、上賀茂神社の上空を飛んでいるのだ。近くの神山から吹く上昇気流に乗って、輪を描きながら空高く舞い上がったところで、ホバーリングのように静止して気持ちいい。南に京都タワー、東に比叡山と辺りの景観にうっとりさせられていた。かと思えば、突然急降下して、ハラハラさせられる。とにかく、ものすごいスピードで垂直に降下して、そのまま地面に叩きつけられるのではないかと、その恐ろしさに身を縮ませた。僕はこんなことを何回となく繰り返している・・・。
冒頭で、鳥になって飛んでいた・・と話したが、正確に言うと、鳥の身体に僕の精神が乗り移った状態だ。つまり憑依しているのだ。鳥は、僕のことなど何も知らないだろうから、好き勝手に飛びまわった。僕は、その鳴き声と輪を描いて飛ぶ、その特性から、この鳥がトンビだと分かった。そして、慣れてくると、申し訳ないが、その身体を操りたくなった。ハイジャックならぬ、バードジャックと言うことになるのだろうか。ようするに、乗っ取りだ・・。
最初、目をつぶって、あっちにこっちにと、飛んでみた。何かにぶつかる心配もなく、実に愉快で面白い。だが、トンビは目をつぶって飛んだことがないのか、心臓が高鳴り、心拍数が速まった。気分が悪くなっているようだ。
次に、どのくらい速く飛ぶことが出来るか、確かめたくなった。そう思うや、どこか広々としたところはないかと、辺りを見回した。東山の山並みの北側稜線に、ひと際突き出た山を見つけた。言わずと知れた比叡山だ。僕はその比叡山に向かった。比叡山の向こう側には琵琶湖がある。少し羽ばたくと、すぐに小さな池と大きく独特な形状の建造物が見えて来た。宝ヶ池と国立京都国際会館だ。
赤うさぎと七福神 島村 ただし @10397ns
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