奴隷とブタ野郎と夢

パンチでランチ

第1話『鎖の音』

カイが物心ついた時から、手首には冷たい鎖が巻かれていた。

それは皮膚に食い込み、汗で濡れた肌を赤くただれさせていたが、誰もそれを気にすることはなかった。奴隷にとって鎖は空気のようなものだったからだ。


鉱山は暗く、湿っていた。石を砕く音、咳をする音、監督役の男たちが鳴らす鞭の音。すべてが混ざり合って、昼も夜も同じように感じられる。奴隷は生きるために働くのではない。死なないために働かされていた。


監督役の男たちは奇妙だった。彼らは皆、豚の顔をかたどった鉄仮面を被っていた。

鼻は膨らみ、牙のような牙が口元から突き出し、目の穴は暗く沈んでいる。

「ブタ野郎」――奴隷たちは陰でそう呼んだ。

彼らの本当の顔を見た者は、一人残らず処刑されたと噂されていた。


カイはまだ若く、骨ばって小柄だった。力はない。それでも他の奴隷と同じようにツルハシを振るい、岩を砕いた。毎日、同じことの繰り返し。

ただ一つ違ったのは、彼の胸の奥に奇妙な感覚が芽生え始めていたことだった。


その夜、彼は夢を見た。

広大な草原を、裸足で走っていた。風が頬を撫で、鎖はどこにもなかった。空は澄みわたり、光が目に痛いほどだった。

知らない鳥の声が響き、遠くには果てしない青い湖が輝いていた。


目が覚めると、カイの胸は熱く、息は荒かった。

「夢……」

その言葉を口にすると、彼の隣で眠っていた老人奴隷が目を見開いた。


「夢を見たのか?」

声は震えていた。

カイは迷った末に、うなずいた。


老人は唇を噛みしめた。

「忘れろ。夢は……呪いだ」


そう告げると、老人は再び目を閉じ、二度と口を開かなかった。


カイは眠れず、闇の天井を見上げた。

胸の奥で、鎖の音が聞こえる。だがそれは重く冷たい響きではなく、何かを解き放とうとする予兆のように感じられた。


そしてカイは知った。

――自分の中に、まだ知らない世界が眠っていることを。

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