俺と6輪の花〜ぼっちの俺が学園のヒロインたちと友達になってしまったのだが!?〜
星山光
初めての友達
トイレの中から叫ぶ声が聞こえる。
「何してんだよ。俺はーーー!!」
♢♦︎♢♦︎
ときは1時間前に遡る。俺、|
「これが玉城山学園か・・・・ここから俺の新しい青春が始まるんだ!」
私立本玉城山学園は全国有数の名門校である。ここには様々な才能を持った生徒たちが集まる。俺は勉強で努力してこの学校に入った。この学校に入ったからには俺はやらなければいけないことがある。・・・・それは友達作りだ。
「まず大切なのは自己紹介だよな。ネットにも最初の印象は1番大切だって言うし・・・」
俺がボソボソ呟きながら歩いていると1人の少女にぶつかった。
「あのごめんなさい。お怪我はありませんか?」
「はい。こちらこそぼーっとしてたので・・・」
「ならよかった。私、急いでるので失礼します」
ぶつかった少女は美しく長い黒髪と透き通った声、整った鼻筋が特徴的な美少女だった。俺は思わず彼女の後ろ姿に見惚れてしまっていた。だが、朝礼のチャイムが鳴ると俺は我に帰った。
「みなさん入学おめでとう。俺はこのクラスの担任をすることになった
担任の渡部が挨拶をしているときに俺は教室のドアを開けた。
「入学初日に遅刻とは大した度胸だな」
「すみません」
「今から自己紹介をしてもらうつもりだったんだ。少年から自己紹介をしてもらおうではないか」
渡部に言われるがまま遅刻した俺は自己紹介をするしかなかった。
「初めまして、俺は鎌ヶ谷悠人です。好きな食べ物はカレーライスです。特技は勉強です。・・・えーと……みんなと仲良くなりたいと思っているので一発ギャグします。人間を初めて見たカマキリ。」
俺はこのボケがウケると思ってやった。しかし、全くウケなかったのである。その後のことはあまり覚えていなかった。みんなが次々に自己紹介をしていく中、スベった恥ずかしさから他の人の自己紹介を全く聞くことができなかったからだ。
そして今に至る。
「何やってるんだよーー。この学校に入るためにめちゃくちゃ勉強して、クラスでの人気を獲得するにはまずエンタメからだろって思って、テレビでお笑い学んだのに。高校デビューするぞってときに限って・・・なんで俺はスベるんだよーー!!」
トイレで休み時間中叫び続けた俺は、教室に戻った。教室ではすでにグループが出来上がっていた。
「今日、これ終わったらカラオケ行かね?」
「いいね!」
「よっしゃ。1年間楽しめそうだわ」
「そのスマホケースかわいいね」
「妹から貰った者なの。だから私にとっての宝物」
「へぇー・・・妹いるんだ」
「うん。4つ下に1人いるよ」
グループは複数できていてその中で楽しそうに話していた。俺はとてもじゃないけど話に入れそうになかった。
その中でもひときわ目立つ2人組がいた。
「ひまわりちゃん、同じクラスだね」
「私もすみっちと同じクラス嬉しいよ!!」
「他の4人とは別々だけど大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うよ・・・アリイちゃんと鈴花ちゃんは同じクラスで、つばきちゃんとぼたんちゃんが同じクラスらしいから」
「それなら大丈夫だね。またみんなと同じ学校なんて嬉しいなー。」
座席表からこの2人が誰なのかすぐにわかった。
♢♦︎♢♦︎
それから、2週間が経った。俺は入学初日にかました遅刻とボケのせいで友達だけでなく話し相手すらいなかった。
「今日、ボーリング行かない?」
「いいね!」
「わりぃ。今日は野球の練習があるんだよ」
「そうか……。俺らとボーリング行く人いない?」
クラスの陽キャ男子が全員に聞いた。もちろんこの中に俺は含まれてはいない。なぜなら俺はぼっちだからである。
「私、行きたーい」
「俺も俺も」
次々に行く人が決まって行く。俺はそんな中、教室を出て図書室に向かった。高校デビューを失敗して以降俺は昼休みと放課後は図書室に通っている。誰の目も気にせず集中して勉強できるからである。
「まもなく閉館時間です。中にいる生徒は速やかに帰宅ししてください」
俺はいつもと同じように図書室の閉館時間まで勉強をした。そして図書室を出て下駄箱に向かっている途中、角から出てきた少女にぶつかった。
「イタタタタタ。急にぶつかっちゃってごめんね」
「前見て歩いてよ」
「あれ?入学初日遅刻してきた人だよね?名前は確か……かま、鎌……カマキリ悠人君だ!」
「鎌ヶ谷!鎌ヶ谷悠人です」
「そうだ。鎌ヶ谷君だ。君面白いよね!」
「えっ、ほんとですか?」
「だって、入学初日に遅刻してスベったんだよ。そりゃ〜面白いでしょ」
「バカにしてます?」
「いやいや、褒め言葉だよ。褒め言葉」
「褒め言葉……。俺もう行きます」
「待って待って・・・鎌ヶ谷君、もう一回カマキリ見せて?」
「俺、帰ります」
「冗談、冗談だよ」
俺は朝野さんと少しの会話をした。学校生活の中でまともな会話をしたのが嬉しかった反面少しからかわれたのもあったのか複雑な気持ちになった。下駄箱に着くと裏から会話が聞こえてきた。
「新山さん、俺と付き合ってください」
「ごめんなさい。私はあなたの気持ちに応えることはできないわ」
俺は告白の現場に出会してしまったのである。しかも俺はこの2人を知っている。女の方は
次の日、俺はいつも通り1人で昼食を食べようとしていると朝野さんが話しかけてきた。
「鎌っち、1人なら一緒にご飯食べよう!」
「え?」
俺も驚いたが、他のクラスの奴らも驚いていた。なにせ朝野ひまわりは『玉城山学園六花女子』の1人だからである。明るいオレンジ色の髪とひまわりのヘアピンが特徴的な彼女は幼い顔立ちと元気でいつも笑顔であることから男女問わず人気が高かった。
「朝野さん、鎌っちって俺のこと?」
「うん!鎌ヶ谷君だから鎌っち」
「なるほど……。でもなんで俺なんかと食べようなんて」
「えーと。面白いからかな」
「またバカにしてます?」
「違うよ、違う。私の友達に鎌っちの良さを知って欲しいだけ」
彼女はそう言うと俺の腕を引っ張って五十嵐さんの席まで連れて行った。五十嵐すみれも『玉城山学園六花女子』の1人である。本人は自分に自信がないようだが、整った顔立ちと普段は前髪で隠している子犬みたいな目が男子からの人気を得ている。
「誰ですか……?」
「すみっち、忘れちゃった?カマキリの人だよ」
「カマキリ?あの人ですか……。遅刻した」
「俺の印象、遅刻とカマキリかよ」
「すみません……。私、失礼ですよね……」
「別に怒ってる訳じゃないから」
「すみっちは謙虚すぎるんだよ。鎌っちにはなに言っても全然大丈夫だよ」
「俺、昨日初めて朝野さんと話したんですけど……」
「友達に時間なんて関係ないでしょ?」
「友達?」
「え?私たちもう友達だよね?」
朝野さんは笑顔でそう言ってくれた。俺はその言葉がすごく嬉しかった。生まれて初めて友達ができたからである。
「そうだ!連絡先交換しよ?」
「連絡先?」
「そうそう。友達なんだからさ」
俺はスマホを出し、朝野さんと五十嵐さんと連絡先を交換した。俺は嬉しかった。なにせ初めての連絡先交換だったからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます