第16話 最後の一人

夜のちゃぶ台。妖怪たちが集まって、湯呑みを前に話し合っていた。話題は、ネネのこと。


「ネネちゃん、そろそろ小梅に会ってもいいんじゃない?」


ナミが言うと、サノがふわっと浮かびながらうなずいた。


「小梅ちゃん、ネネのこと、すごく気にしてるよ。前に少しお話したら、すごく会ってみたいって言ってた」


「……でも、怖がられたらどうするの?」


ネネは目を伏せて言った。百の目のうち、ほとんどが閉じている。


「小梅は、怖がらないよ」


チヨが優しく言う。


「私たち、みんな最初は怖がられると思ってた。でも、小梅ちゃんは違った」


「うん!むぎなんて、膝に乗ってるし!」


キヨが笑うと、むぎは「にゃー」と照れくさそうに鳴いた。


「……でも、みんなとは違うの。私は目が多すぎる。見られるのが怖い」


ネネの声は震えていた。


「見られるのが怖いなら、見せたい目だけ開ければいい」


セイが静かに言った。


「小梅は、見えるものだけじゃなくて、見えないものも信じる子だ」


ミワは腕を組んで、ぽつりと呟いた。


「……あたしも、首が伸びるの見られたけど、逃げなかったよ」


ミワは、長く伸ばした首をネネに巻き付けて言った。


「あんた、私より顔良いんだから自信持ちなさいよ」


「ネネちゃん、行ってみようよ」


ナキが優しく言う。


「怖かったら、ぼくが隣にいるから」


ネネはしばらく黙っていた。でも、眼に少し涙をためて首を横に振った。


「嫌……怖い」


みんな、困ったように顔を見合わせる。ミワはため息をついて言った。


「あの子はあたしが何とかしておくから、あんたらは好きなことやりな」


妖怪たちは、ネネのために少しずつ動き始めた。

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