―蒼海のレヴェン海戦記― 〜異国紀行記〜

NEON_あるてみす

第一章「蒼海のレヴェン」

第1話(プロローグ) ― 「蒼海のレヴェン」

 今、これを見ている貴方は "いつも何をして過ごしているだろうか?"


読書、勉強、ゲーム、家族との団欒。人それぞれ様々な日々があるはずだ。


―だが私は、そのどれにも当てはまらない―


 なぜなら私は、アラン帝国が誇る最新鋭、国家の切り札とも呼べる"不沈"のイージス艦に乗っているのだから。


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   アラン帝国の首都、「アウラ」。

 その市街をまっすぐ貫く大通りには、古風なレンガ造りの家々が軒を連ね、首都でありながらどこか落ち着いた空気をまとっている。

 首都の1角にあるこの街「コルヴィアA区」は、海へと緩やかに傾斜した丘に築かれている。歩いてきた道をふと振り返れば、陽光を受けてキラキラと輝く、静かな海が一望できた。


 そんな穏やかな時を送っているのは、明るく落ち着いたマットな地毛の金髪、黒に近い茶色の透き通った目、すっとした細い体型、約170cmと少し高い背丈の女性。

 名は(セレナ・ストームレイジ)


「お〜い!君!線路の上で止まらないでくれ!」

「あ、すみません。」


 美しい海を眺めていると、うっかり路面電車の線路の上に止まってしまっていたらしい。

 私は謝罪し、一礼した後にその場を立ち去ろうとした。その時だった。


「あ!セレナさーん!ご無沙汰していまーす!!」


 足を進めようと前に向き直った時に、後ろから声をかけられた。何か聞き覚えのある声。てか街を歩いていると度々この声を聞く。

 後ろを振り向くと、呼んだ本人はもう目の前に来ていた。

 名は【リナ・エヴァーソン】。17歳で私と2歳差の幼馴染である。


 彼女とは幼稚園児の時から馴染みがある。初等学校でも同じであり、初中高校成績優秀。コミュニケーションも卓越していると来ている。

 彼女はその後、アウラ海軍士官学校に入学。そこでも冷静な判断力、特技であるコミュニケーションを活かして評価を積み上げた。


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〈数年前、海軍総司令部にて〉

「……この年でここまでの成績をたたき出すとはな。リナ少佐。」


「恐縮です。私には勿体ないお言葉であります。」


 彼女は訓練などでメキメキと実力を付け、1年かからず少佐にまで上り詰め、司令部にまで注目されるいわゆる弱点のない「英才型ギフテッド」である。


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 長々と彼女の功績を思い浮かべてしまったが、一言で片付ければ頭が突出していい。

 だが、何より良くも悪くも思われるのが…


「セレナさん!さっきまで何してたんですか?今日何か予定あるんですか?なかったらちょっと付き合ってくださいね!」


 まぁ、ムードメーカー、社交的、、である。


「そうだね、さっきまでここらへんをフラフラ歩いていただけだから。予定は特にないよ。」

「セレナさんと行きたい店があって〜、よかったら一緒に行きません?」


 彼女は黒く、くっきりとした目をキラキラと光らせこちらを向く。

 そんな顔をされたら行くほか手が無いではないか、、そんな考えに即至った。


「最近仕事詰めで店とか行く暇もなかったし、、よし、行ってみようか。」

「やったぁぁぁ!!!」

 周囲の人がこちらを怪しむような顔で見る。


「あぁ、こ、声抑えて、」


 そんな調子で今日、一日が進んでいく。


_______


 私は帰り道、海岸線を歩いている最中、ふと海を見ると遠く先の空に陽光を反射してきらっと光る高速移動物体が目に映った。

 速度、移動の仕方、うっすらと見える形、、戦闘機だろうか。だが、海軍、空軍ともに航空隊がここらを飛行する予定は入っていなかったはずだ。


 私は異変とともに何か嫌な予感を感じ、リナに確認を取る。


「リナ、西南西、私基準11時の方向。あっち…何か高速で移動するもの、見えない?」

「見えました。おおよその形状からして戦闘機かと。機種はおそらく…VZ-5《VZフィフス》(※)と思われます。」


 私はその報告を受けスマホを開き、もう一度航空隊の飛行経路、時間の確認を行なった。

 だが私の持つ情報の中では、やはりあの方位の地域を飛行する予定の部隊はない。

 私は海軍司令本部にスマホ越しに通達した。


「本部へ、聞こえますか?セレナ・ストームレイジ一等海佐です。先ほど西南西を飛行する所属不明機と思われるものが視認できました。そちらのレーダーで確認お願いします。おおよその形ではVZ-5だと推測されます。リナ・エヴァーソン3等海佐と同行しているので2人ですぐにそちらへ向かいます。」


 私はリナに状況を簡潔に伝え、すぐにタクシーを呼んで急ぎ本部に向かった。


 いざついてみると本部内は騒然としていた。レーダーで捕らえたのが私たちの推測で合っており、方位変針の要請にも応答しないのである。

 このまま行けばすぐにこの国の首都、アウラがある。


「司令!あの機体が何を目論んでいるのかは知りませんがもう領海は確実に侵犯しています!スクランブル命令を出して直ちに帰還させるべきです!」


 本部内の誰かが司令に伝えている。領海も侵犯して引き返しに応じない、確かにスクランブルの条件をすべて満たしている。

 そして、もうそろそろ手を打たなければ間に合わなくなる。


「領海侵犯確実、おまけに無視とくるか。了解した。スクランブルだ。」

 司令がついに決断した。皆が了解と大きく返事をし、基地内に甲高いサイレン音が響く。


「アウラ海軍第2航空隊所属のアルファ隊は直ちにスクランブル。敵機との意思疎通を試み、指示に従わない場合撃墜を許可する。後続のスペア隊も発進準備急げ。」


 基地内に指令が行き渡ったようだ。5分もたたないうちに4機が夕日の輝く橙色の大空へ羽ばたいていった。


 私とリナは司令から【念の為、艦をいつでも動かせるようにして待機】との命を受け、遠くはない停泊地に急いだ。



 コツン、コツンと固く、冷たい音が2つ、海の波の音と共に響いている。

 たまに心地よい潮風が吹き込んでくる。やはり海は美しい。余裕ができた時にゆっくり眺めたい。


「セレナさん、レーダーで見えた機はたった1機ですよね?ここまでする必要あるんですかね、?」


 リナは少々不服そうだ。久しぶりの私との時間を壊されたと不貞腐れているのだろうか。照れるな。。

 彼女が言っていることはあながち間違いではない。1機しかいなかった。


だが


「リナ。確かにレーダーでは1機しか見えなかった。だけど、遠方に空母がいたら?まだ奥に爆撃隊とか本隊がいたら?今回は不自然な点が多い。油断ができない。……何より、司令からの命令だ。私たちも最善を尽くそう。」

「了解。」


 私達はアラン帝国の誇る最新鋭イージス艦、「レヴェン」の前に来た。乗組員はすでに話が通っているようで、艦の出港準備を淡々と進めていた。


「あ、艦長、副艦長!出航準備完了しました。命令があれば2分で出れます!」

「わかった。」


 再度自己紹介を。セレナ・ストームレイジ1等海佐、イージス艦「レヴェン」の艦長である。

 私の隣に立つのはリナ・エヴァーソン3等海佐、イージス艦「レヴェン」の副艦長であり、駆逐艦「アベル」の艦長を兼任している。

 今、アベルは先の戦闘の被害で修理に出ているため、副艦長の任に就いている。


【先程、付近を航行中の第三艦隊が敵機動艦隊を確認した。第一駆逐隊は直ちに出港、第三艦隊と合流し、本土攻撃を目論む機動艦隊を撃滅せしめよ。】


 来たか、と呟き私は周囲を見渡した。周りでは木箱を倉庫に運ぶ人、艦のメンテナンスやチェックを行う人、物資を出し入れする人、様々だ。

 私はスッと息を吸った後、皆に告げる。


「総員乗り込み急げ。敵機動艦隊と敵航空隊が来ている。機関始動開始、出港準備急げ。」


 私の命令と同時に皆が得た情報を復唱し、作業を進めていく。

 私とリナも艦の前に来て、整列している港湾作業員らに一度敬礼をし、艦橋に向かって歩みを進めた。

 リナは甲板まで来ると私に敬礼し、司令室に駆けていった。


 甲板に着くと煙突から煙が上がってきた。港内に出航ブザーが鳴り響き、同じ港に準備、待機していた駆逐艦も動き始める。


「艦長入室。一同敬礼!」


 先に司令室に入っていたリナの一言で全員が私に向けて敬礼をする。


「皆、今回の任務は本部から命令された区域、そして敵艦を発見した場合の撃滅だ。各員、一層奮励努力せよ。」

「「了解!」」


 皆は勇ましい返事を発し、席に着いた。


全員が目の前の電子パネルや機器に向き直ったところで私は頭に浮かんだ言葉をふと口にする。



     『皆、戦争の時間だ。』


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2025年12月27日 10:30
2025年12月31日 10:00
2026年1月1日 10:00

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