高校三年生ながら中高一貫の全寮制の女子校へ編入したいのり。同室の子は西洋絵画から抜け出してきたかのような金の髪をした美少女で、睫毛までも黄金色の輝きを放っていたのでした。甘い香りを漂わせた彼女の名は蜂蜜と言い、彼女と同室になった人は不幸な目に遭ってしまっていました。そんな蜂蜜からいのりが察知したのは、人知を超えた異形「かみさま」の気配でした。
笑えなくなってしまったいのりと、美しい見た目からは想像もできない秘密を抱えた蜂蜜。「かみさま」に翻弄されてきた二人の少女が、寮や学校生活を通じて距離を縮めていく過程は、息をするのも忘れるほど魅入られます。
永遠に続いてほしい蜂蜜といのりだけの世界を引き裂こうとする人ならざる「かみさま」の与える絶望に感情を揺さぶられながら、幸せを掴んでほしい二人を見守りましょう!
とある高校の寮で同室になったいのりと蜂蜜。
蜂蜜には『ある秘密』があるのですが、いのりにも秘密があって……。
やがて二人は惹かれ合い、交際するようになるが、蜂蜜の『秘密』いのりの『秘密』両方によって二人は決して結ばれない運命で……。
っていう百合作品なんですけど、最後まで読んでね、あまりのその愛の美しさに私の涙腺はガチで崩壊しまして。
PCの前でとめどなく流れる涙、圧倒的な余韻に浸っていました。ああ、これが二人にとっての『最善』だったのだなぁ……と。
神に魅入られた人間は、幸せになれるのでしょうか……?
神とは、いつの時でも圧倒的『善』なのでしょうか?
答えは否です。そうじゃない神もいるし、神に魅入られた事で不幸になる人間もいるのです。
圧倒的な筆力で語られる二人の愛は、とても美しく尊いです。
百合とか、BLとか、NLとか、そんなくくりに囚われない、そんなくくりはどうでも良くなる読後感。とんでもない余韻です。
涙を流しながらしばし放心しました。このレビューも、涙と脳が落ち着いてから書いています。
百合に抵抗がなければ、是非ともご一読願いたいです。それほどにこの作品で語られる愛は美しく尊いです。
かみさまが見えるいのりと、かみさまの花嫁になる蜂蜜。
二人の物語は、全寮制の女子校にいのりが転校し、蜂蜜と同室になることから動き出します。
二人のやりとりが可愛らしくて、ちょっともどかしくて。
この作品が「ホラー」であるということを忘れてしまいそうなほどです。
そして忘れそうになった頃にやってくるのが、かみさま。
このかみさま、非常な厄介です。
まず、いのりを「すりおろしたい」かみさま。
そんなかみさまに「すりおろしましょう!」と賛同する謎の声。
とにかく気味が悪い。このシーンが出てくると、作中の空気ががらりと変わります。ぞくぞくと背筋が寒くなるくらいに。
加えて、実害が出るのでタチが悪い。
そして、かみさまの「花嫁」にさせられる蜂蜜。
両親もかなり酷いものです。どうしても実家に帰らなければならない日が寮にはあり、そのときは彼女のことが心配でたまらなくなります。
怪我もせず、また寮へ帰ってきてくれるのかと。
人にはわからない孤独や悩みを抱えて生きてきた二人。
互いが互いを支え合う存在になるのに、そう時間はかかりませんでした。
二人で過ごしている時間は甘くて、切なくて、あたたかくて。ずっと続いていてほしいと願いたくなるほど。
だからこそ、二人の幸せを願わずにはいられないです。
かみさまにとらわれず、二人で幸せになってほしいと。
いのりと蜂蜜、二人はどのような結末を選択するのでしょうか。
ぜひ、皆様も読んでみてください。
――電車の車窓から、かみさまが見えた。
一行目から、心をつかまれた。
この物語は、著者による説明文には(寮生活×百合×ホラー)と記されている。
これを読んで「自分向きではない」と感じた人がいたら、もったいない。
もちろん寮生活で百合でホラーなのだけど、この作品の背骨には、エンタメの王道的ストーリーラインがある。一般人には不可視である異形『かみさま』を視認できる少女が、ヒロインを異形による(ある種の)呪いから解放しようとするのだ。
この『かみさま』たちは、偏在する。
――海にも、湖にも、川にも、山にも、森にも、花畑にも、かみさまはいた。
二人の少女の甘い百合展開を見守っていた読者は、急に現れる鮮烈なビジュアルに、平手打ちを食らわされることになる。
――真っ赤な鯨のような、かみさま。体表のあちこちに人間の目と鼻と口を模したような傷痕があって、そこから滴るのは墨汁のように真っ黒な液体。
こ、これは……!? 今まで読んでいた百合は? (某ネットミーム)
となること間違いなしなのだ。
そしてこの『かみさま』たち、ひらがなで記されていることからも分かるように、ただ恐ろしいだけでなく気持ち悪さとかわいらしさを合わせ持っており、強く生理的な不快感を催させる。フワフワした甘さとドロドロしたグロさを交互に見せていく表現の振れ幅が、作品の魅力のひとつだ。
この物語には、それ以外にも相反する要素が多く配置されている。
理性と狂気。
優しさと冷たさ。
きれいなもの、汚いもの。
嬉しいこと、悲しいこと。
与えられること、奪うこと。
罰と赦し。
執着と解放。
情緒が、ぐわんぐわん揺さぶられる。
物語は少女たちの強い意思の力で終幕へと向かう。
その方法については周到な伏線が張られている。
対峙する『かみさま』が超常的な存在であることで、
ホラー作品としての強度が最後まで崩れない。
終わり方には、作り手の優しい眼差しを感じた。
とても面白かったです!
主人公いのりは〝かみさま〟が見える。
高校三年の春、全寮制の女子高に転入した彼女は、〝かみさま〟に異様な執着をされている蜂蜜という少女と出会います。
いのりと同室になった蜂蜜には深い闇があって──。
深い孤独やトラウマを抱えた二人は、徐々にひかれあっていきます。
天真爛漫で明るく積極的に見えて、どこかなげやりだった蜂蜜と
冷静でクール、控えめに見えて情熱的ないのりのやりとりは切なくも美しく、恋愛小説としてどきどきしてしまうような蠱惑的なシーンも多い。
けれど、二人の仲が深まれば深まるほど、背後にいる不気味な〝かみさま〟の存在が重さを増していきます。見えないはずの読者にも感じるほど存在感。
どうして蜂蜜は〝かみさま〟に執着されているのか。
いのりは蜂蜜を救うことができるのか。
思い合えば思い合うほど崩壊してしまうんじゃないかという不穏感がまさに百合ホラー!
尊いだけじゃない不安定さがたまりません。
そんな二人の結末。
作品タイトルや章タイトル、いのりの〝かみさま〟が見える絶望、蜂蜜の〝かみさま〟に執着されている絶望、すべてが反転していくようでした。
どんな結末だったのか、ぜひ見届けてほしいです!
ひりひりとするような絶望感と不安感。それに苛まれる中で描き出される恋愛模様に、とても心を揺さぶられました。
高校生になった野橋いのりは、同じ学校の寮で暮らす筒井蜂蜜に強く心を惹かれることになる。なぜか、「特定の時間は彼女と同室にいてはいけない」とか、「彼女と同室になった生徒は不幸な目に遭う」などの噂が付きまとっている。
なぜか血液の色も赤ではなく蜂蜜色。そんな常人とは違った特徴を持つ蜂蜜のことを知れば知るほど、いのりはよりいっそう彼女と近づきたいという想いが強くなる。
いのりにも、幼い頃から「普通でないもの」が常に付きまとっていた。「神様」というものを目にすることが出来、同時に神様もいのりの存在に注目してくる。
「すりおろしたい」と物騒なことを口にする神様。それに呼応して「すりおろしましょう」などと迎合する謎の声。
異形の神様は一体ではなく、世の中には何体も存在する。でも、いのり以外の人間にはその姿を見ることはできない。
でも、決して幻覚などではなかった。
いのりが見ている「神様」は、たしかに他の人間に危害を加え、命を奪われるような事態も引き起こしている。
そんな神様の存在にずっと苛まれ、「普通」とは距離を置かざるを得なかったいのり。そんな彼女が蜂蜜と出会ったことで、強く心を揺さぶられることに。
いのりも蜂蜜も、同じく「神様」によって人生を歪められている。そうやって同じように「欠落」を抱えて生きていた二人は、狂気と絶望と隣り合わせの日常の中で強く惹かれ合うようになっていく。
本作は「神様」の不気味な姿や言動など、不穏に満ちた世界観がなんと言っても魅力的です。そんな常識の通じない力に支配される中で、いのりと蜂蜜の二人が必死に「幸せ」を求めようとする姿。そんな儚くも力強い姿が何よりも印象的でした。
果たして、二人の未来はどうなってしまうのか。
ラスト、二人が選択する答え。「タイトル」として提示されている言葉。そして、途中で「神様」が語っていた「とある特性」についての話。それまでの伏線が一気に回収される展開に鳥肌が立ちました。