第3話 幼馴染として

秋野と一緒に帰路についた後、特にこれといったイベントが起きることもなく。他愛のない話をしているうちに気づけば、お互いの家についていた。

「そういえば、今日しんくんちおばさんとおじさんいないんでしょ?」

そのことばにそういえばそんなことを朝学校に行く前に聞いた気がする…

「それがどした?今日は一日ため込んだゲームとかラノベとか読むつもりだけど…」

その言葉を待っていたかのように秋野は高らかに宣言する。

「今日わたし、そっちに泊まるから!」

ソッチニトマルカラ?どういうこと?トマルカラっていう新しい料理?

「すまんもう一度行ってくれ」

「私、しんくんちにお泊りする!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!」

この時の大声は私の人生史上一番大きい声だったと今でも思う。

そんなわけで…

「どうしてこうなった…?」

今絶賛現在進行形で片思い中の相手と一つ屋根の下で過ごしております。えー現場からは以上です…てなるかぁ?!なんでこうなったの?しかも、今あいつ風呂入ってるけど?この後どうすればいいの俺?

アワアワしていると秋野が風呂から上がってきた。

「お風呂先にいただきましたー」

制服や私服とはまた違った装い。比喩でもなんでもなく女神のような存在感を放っている。そんな彼女に見とれている俺をみた彼女は。

「もしかして、私の姿に見惚れた?」

「あ、ああ。すごくきれいで似合ってるよ」

ん?俺今なんて言った。全く頭が回らなかったからありのままの言葉を投げかけた気がする。ふと、秋野の顔を見ると、トマトもびっくりなほど赤くなっていた。

「ふ、ふーん…そんなこと思ってくれてるんだ…」

顔が真っ赤だが体調などが悪いわけでもなく、むしろご満悦の表情を浮かべている。

まじで、女子の表情って何考えているかわからん…

「とりあえず、俺も入ってくるか…秋野はその辺でくつろいでいてくれ」

いったんこの空気を仕切りなおすべく、ついでに俺自身もクールダウンするために風呂に入ろう。そうして、俺は風呂場に向かったのだった。


「でへへ…きれいって言われた…」

私、夕凪秋野は先ほど幼馴染のしんくんに言われた言葉を反復して思い出しながら、頬を緩ませていた。ほかの人から見ればとても見るに堪えない顔であるがここにはだれもいない。それに…

「しんくんと二人っきりかー」

再びでへへと自然と笑いが浮かんでくる。あんなことやこんなことを今日という日はできるのではないか…?と考えてみたり…

「何やってんだお前?」

突然後ろから声がかかり驚きのあまり前に倒れこむ。

「きゃ!」

「あぶねえ!」

地面に激突すると思いとっさに目をつむったが、一向に床にぶつかった衝撃が来ない…

おそるおそる目を開けると目の前に、しんくんの顔があった。


風呂から上がってリビングに戻ると、秋野が立ちながら何やらぶつぶつとしゃべっているはたから見れば危ない奴だが…いやすでに若干危ない奴に片足突っ込んでいるが、とりあえず声をかける。

「何やってんだお前?」

すると彼女はビクッっとして、バランスを崩したのか前のめりに倒れそうになる。

「きゃ!」

「あぶねぇ!」

何とか手をつかんで倒れないようにするが体勢を立て直すまではできない。何とか、勢いをそのままに、自身を下にして倒れるようにする。

後頭部と胸部に衝撃。後頭部は床との激突で胸部は秋野の頭だろう。

「いたた…大丈夫か?」

俺のその言葉に、秋野は…

「ひゃ、ひゃい」

と返事か返事じゃないのかわからない声を発した。

「秋野ー?真一君といっしょに食べるお菓子とか持って…」

玄関が開いたと思うと、秋野の母親である、菜津さんが入ってきてそれと同時に今の俺たちの惨状を目の当たりにした。

を…

「あ…えーっと…お気遣いなくー」

ぱたんと扉が閉まる音が静寂の中響く。

「おかあさん?!ちょっと待って!おかあさーーーーーん!」

俺よりも少し早く再起動した秋野が弁明すべく後を追った。

「柔らかかったな…」

若干ずれていることを考えている俺を置いて…

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君とまた花火を見たい 一ツ星 @tororosova

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