黒幕の可能性
群衆は先ほどとは打って変わって静まり返った。
リズは切り出した。
「話すわよ。まず、何でこんなことになったのか……あくまで私の憶測の域をでない。確証はないの。そこは理解したうえで聞いてほしい」
海中には、ただ静けさという緊張の糸がピンと張られている。
「5年前、戦闘用AIが暴走した事件があったでしょう。第四次世界大戦のあの日、バラバラだった人々は、すぐにやられてしまった。そこで、世界の中でも要人達、そしてこれからの未来を生きる子供達が月へ行った。そこにAIが更に追い打ちをかけているのが現状ね」
俺の知らなかった真実が、次々と明るみに出ていく。
俺だけじゃない。
「でも、ここで一つ疑念があるわ。何故あなたたちが殺されなかったのか。私はもう全員死滅していると思っていたわ」
「どういうことだ?」
俺は詳しく聞きたくて次の言葉を待った。
リズは黙って目を瞑った。
「もしかして……」
アイラは口を押さえた。
そのエメラルドグリーンの綺麗な目の内から涙が溢れてきた。
「私達……生かされてたってことかい?」
「ええ、可能性の話だけど」
リズは目を見開いて話を続けた。
「そうなった時に出てくる可能性なんだけど、AIの暴走には、黒幕がいたかもしれないわ」
「それは何故だ?」
「AIは、人と違って完璧を求められるから、AIが自ら暴走したとしたら、全員を殺し切るまでやめないわ。そんな中途半端に人間を生かすなんて、そう指示をした親玉がいる可能性が大いに高い」
リズの話は一番筋が通っている。
「そうなると、私たちの動きが活発になると、つぶされる可能性があるわ」
「監視されている状態にあるってことなの……」
デリーナは絶望したように言った。
この会話も、誰かに聞かれている可能性がある。
「まあでも、俺にはしっかり戦闘技術があるから、大丈夫じゃないか?一つ作戦を思いついた」
全員が、俺の方に顔を向ける。
「もしこの場所を救うことに成功したら、AI戦争時の人類の最終拠点、アメリカ軍基地に行こう。俺とリズとAI達で」
「なるほど、そこで計画を立てるということね」
リズは合点が行ったようだ。
「じゃあ、わしらはどうする?」
ハルクおじさんは俺の目を見つめた。
その時、アイラさんが口を開いた。
「ここを、この街を、またやり直そうよ。私たちならできるでしょう!」
「そうか。そうだな、やろうか」
ジョイルにもスイッチが入ったようだ。
あちこちから歓声が上がった。
「やろう!俺たちの戦いはまず、ここ第一海中都市を守り抜くこと、そしてここでAIに打ち勝つことだ!」
見えてきた。
全ては、知らない黒幕に迫るために。
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