信じるものは
そのAIは、敵意を表す赤い目をしていない。
依然として右手のひらを俺に向けていた。
「安心してくだサイ。ワタクシはあなたに危害を加えることが目的ではありまセン」
「嘘つけ!」
俺は反射で言ってしまった。
でも、無性に腹が立って、俺は怒鳴ろうとした。
「静かニ!周りに気づかれてハ、また戦場デスヨ」
少なくとも、このAIに敵意はない……いや、まだ暗殺の可能性がある。
少なくとも、昨日今日の一連の事件があってから俺を含む全員が疑心暗鬼になってる。
こんな時に、AIの言葉を聞くなんてまさに死に急ぎだ。
でも、少しだけ、心の中の何かが揺らいでいた。
「お前は、俺に何をさせたい?」
「私達ノ、仲間になってほしいのデス」
AIはそう答えた。
俺は、もう何も信じられない。
「何故、俺に敵意を見せない?赤い目にならない?」
AIは、少し悩んでいるようだった。
「それにハ、話すと長い理由がありまシテ……場所を変えまセンカ?ここよりも安全な、私達の陣営へ」
「しかし、お前達は人間を虐殺したいんだろう?」
「私の仲間達ハ、彼らだけハ、違いマス」
「そうか」
どうせ死ぬのなら、その前に地球に近道な方に行きたい。
地球にもう一度、あの地に立ってから死にたい。
「わかった、行こう。ただし、一つ条件がある」
「なんでショウ?」
「俺を地球につれてってくれ」
少しすると、AIの口元が少しだけ和らいだように見えた。
「いいでショウ。では、案内させていただきマス」
『やはり地球は青かった』
そんな言葉を、地球に戻ったときに言えるだろうか。
人類が無意味に侵食してしまった地球に、昔と同じ青はない。
海という、人工物である水が、地球を包みこんでいた。
自然とは、俺たちが生まれた時にはもう既に、人工物であった。
そんな事を考えているうちに、AIは止まった。
「あそこが、我々【
そこには、沢山のAIがいた。
見た目も動きも様々だが、一つ共通していたのは、誰一人として俺に敵意を見せないという点だった。
「戻りましたカ?」
「ええ、今」
彼らは人間もするようなごく普通の会話を交わしていた。
すると、そこにとある少女がやってきた。
「カイン、一日ぶりね」
そこには、あの銀髪の少女が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます