第23話 祖父中島宗延の最期

 ずっと考えていた、

 清延が今ここにいる、今生きてこの道を清延の本懐を遂げる為にある命を。


 それは、林城の戦いの時であった。

武田軍の突然の攻撃に小笠原長時は慌てて籠城をしようとした。

しかし祖父宗延の打って出る作戦を聞いて、急遽全軍で戦ったが、惜しくも敗退した。


もし籠城戦をとっていたら、小笠原家だけでなく一心同体の中島家も妻、子供全て死に絶えただろう。


 咄嗟の宗延の策略のおかげで、一早く小笠原家と中島家の女子達は近くの山に避難してた。


 そのお陰で負けて、城はとられたけれど、主な人々の命は助かり、小笠原長時は一家でその後上杉家を頼って逃げ延びた。


そしてその戦いの先頭で槍を振り回して奮戦したのが宗延だった。

その最期は凄まじくて敵も逃げ出す程であったから、その隙に逃げ延びたのだ。


 真っ先に逃げたのが長時だった。


 やはり城を束ねる戦国時代の武将には向いていない様だった。

そして父が負傷したけれど、命はあったので、暫く敵が去るのを待ち、祖父宗延を小笠原家の菩提寺に頼む事も出来た。


 その時、首は取られてなかったと探し出した中島の家来から伝えられる。


 祖父が残した槍も手元に戻ってきた。

それが今手にしてる祖父の形見の槍であった。

負傷した父明延は一家と共に妻の南殿の実家と縁のある京都に行くことになった。


負傷した為、殿と共に上杉家に行かなかったのもあるが、死ぬ前の宗延からの言葉であった。


「もし、勝てばよいが、もしもの事もある。負けたら一家で京都へ行き商人になるのだ、この様な強い武田軍団と戦うには、この地では何も得られない、京都へ行き境の港に入る他の国の武器を使うしか、武田に対抗出来ぬわい」


その事は後に父から聞いた話だ。

やはり祖父には未来が見えてたと推測出来た。

自分と同じ力を持つ祖父が残した最期の伝言は一番大事な遺言でもあり、清延にも深く心に刻まれた。


 その戦いの2年後には、京都で商人として中島家の人々は暮らしていたのだから。


祖父の形見の槍を握りしめる清延により強い雨が降りかかって来た。

武田を打つ為、やはり師匠の言う、岡崎へ早く行かねば、しかし物で釣られる殿ならやめようと思った。

「織田信長さまもやはりやめよう……」


 これから訪ねる殿が、武田信玄より優れた人なら良いのだがと雨に打たれながら考える。




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