機動傭兵アサルトマスカレイド

原純

第一章 転生少年バレット

第1話 異世界転生

 ★ ★ ★


 カクコン11に合わせて新作始めます。

 SFロボットモノです。

 SFロボットモノで第一話サブタイがそれなの?


 ★ ★ ★





 異世界転生。


 その言葉を聞いたとき、人は何を想像するだろうか。

 おそらく多くの人はこう思うはずだ。

 剣と魔法の世界で、刺激に満ちた二度目の人生を送ることになるのだろう、と。


 不慮の事故で不幸にも命を落とした、ある青年もそう思った。

 ましてや、その不幸の帳尻合わせに、何でも好きな『スキル』を3つまで持って転生していいとなっては。


 もちろん直接そのように誰かに言われたわけではない。

 ただシステマティックに、無数のリストの中から3つのスキルを選ぶよう促されただけだ。

 そのリストにある言葉の意味は一切説明がなかった。そもそも『スキル』とは何なのかの説明もない。


 しかし問題はなかった。

 こういうものはたいてい「テンプレ通り」と相場が決まっている。いや決まっているからこそ「テンプレート」と言うのか。


 青年はリストの右上に表示されている「残りポイント」と、リストのスキルの横に評されている「コスト」と書かれた数値から、つまりスキルのコストを加算した結果この残りポイントの数値がゼロにならないようにすればいいのだ、と考えた。


 試しに、どういうタイプの異世界であれ、これは確実に必要になると思われる【鑑定】スキルを選択してみた。

 するとそのコストの数値分だけポイントが減った。

 青年は自分の考えが正しいことを確信した。


 次に青年は2つ目のスキルも異世界転生するのなら絶対に欲しいと考えていたものにした。

【スキル強奪】だ。

 これさえあれば、転生時にスキルを3つしか選べない制約など、あってないようなものだ。転生後の立ち回り次第でいくらでも増やすことができる。圧倒的なアドバンテージを得られるだろう。

【鑑定】のコストが他のスキルと比べて高かったことに対し、【スキル強奪】が異常に安いのは気になったが──それこそ隣に表示されていた【アイテム強奪】と比べても圧倒的に安い──安い分には文句はない。

 青年は別に損をしないからだ。


 2つ目が想定外に安かったおかげで、3つ目も【鑑定】並に高額なスキルを選ぶことができる。

 青年は熟考の後、【超頑健】というスキルを選んだ。

【超頑健】は【頑健】の上位スキルと思われ、【頑健】の実に3倍のコストを要求されるものだった。

 不親切なこのシステムはスキルの内容までは教えてくれない。しかし上位スキルであるなら腐ることはないはずだ。


 攻撃手段や、あるいはこれも定番の【転移】系や【アイテムボックス】系のスキルを取る選択肢も考えた。

 しかし攻撃手段もその手の便利系も、転生してからいずれ【スキル強奪】で奪えばいい。

 まずは死なないことが肝要だ。【超頑健】で怪我や病気に耐え、隙を見て誰かからそういう『切り札』を奪う。

 とにかく死にさえしなければ、【鑑定】と【スキル強奪】で活路は開けるはず。


 3つのスキルを選ぶのであれば、情報収集、戦力収集、そして防御だ。この組み合わせ以外あり得ない。

 青年はそう考え、スキルの取得を終了した。


 するとすぐに意識が遠のいていき。


 赤ん坊として、世界に生まれ落ちたことを自覚した。



 ◇ ◇ ◇



(──それがまさか、剣と魔法の世界じゃなくてSFの、いや、実際に俺が生きてるわけだからサイエンスじゃねえけど、とにかく科学が超発達した世界だったとはなぁ……)


 黒ずんだ赤毛の前髪をかきあげ、少年はスラムの空を轟音とともに横切っていく三つの雲の線を見上げた。

 戦闘機の編隊飛行かなにかにも見えるが、あれは前世で言う「戦闘機」ではない。いや戦闘をする機械という意味でなら確かに戦闘機なのだが、空対空戦闘のための軍用航空機という意味でなら、明確に違うものだ。

 あれは人型のロボットが飛んでいるのである。

 彼の頭上に描かれているのは、人型ロボットが編隊を組み、どこかへ出撃していくらしい光景だった。


 ここは剣と魔法の世界ではなく、超科学によって一度は世界崩壊の憂き目に遭った、巨大ロボットが闊歩するポストアポカリプスの世界だった。


(そんな世界で、身体が頑丈? 病気にならない? そんなもんにいったいどんだけの価値があるってんだ……)


 今でこそスラムなどに落ちぶれているが、彼の生まれはこの街において最高位の上流階級と言っていいものだった。

 そんな家庭に生まれたのだから、当然怪我とも病気とも無縁だ。先天性の障がいや疾患でもあれば別だったかもしれないが、そういうものもなかった。

 それでも【超頑健】が高コストだったのは、その性能の高さから、だろう。おそらく。


 このスキルに守られた身体には、基本的に物理攻撃は通用しない。

 つまり至近距離から撃たれた銃弾さえも通さないのだ。

 いくら怪我とは無縁の生まれとは言え、いやだからこそ、何かの事情で「暗殺」の危機にさらされる可能性はある。

 そうなったとしても【超頑健】さえあれば、スナイパーの凶弾も恐れることはない。

 コストが高かっただけある。実に素晴らしいスキルだ。


 それが「害意あるもの」だけを弾くのであれば、だが。



 ◇



 この国では、12歳になった子どもに例外なくある「注射」をすることになっている。

 予防接種のようなものか、と漠然と考えていた少年は、両親と医師に言われるがままにその注射を受けた。

 マノ・マシンだかナナ・マシンだかもう忘れたが、とにかくそんな名前の薬液の入った注射器の針が彼の腕に突き刺さ──らない。

 針は虚しく少年の皮膚を滑った。


 自分がミスをしたと思った医者は苦笑いを浮かべ、気を取り直してもう一度針を彼の腕に突き立てる。

 今度は角度を変えたおかげか、滑りはしなかった。

 しかし刺さりもしない。ぷに、と少年の子供らしいきめ細かな肌が少しヘコむだけだ。


 その後も医者はむきになって何とか少年の腕に針を刺そうとするも、いずれも実を結ぶことはなかった。

 医師はこの日の注射を諦め、後日改めて、別のタイプの注射器も多数用意して再挑戦をすることになった。


 自室に戻った少年は考える。

 注射器が刺さらなかったのは、おそらく【超頑健】のせいだろう、と。

 お前何してくれてんねん、と。

 便利スキルどころか害悪スキルやんけ、と。

 何ならお前一番コスト高かったんやぞ、と。


 ちなみに【鑑定】もハズレスキルだったと彼は思っている。

 なぜなら、この技術的に発達した世界では、大抵のことは個人用のデバイスで調べれば情報が出てくるからだ。

 調べたいものをデバイスのカメラで撮影し検索すれば、それが自然物なら図鑑などに記された詳細を、人工物ならメーカーや型式やスペックを、誰でもいつでも情報として得ることができる。

 ポストアポカリプスな世界だけあって、得られる情報には制限がある。基本的には国内の情報しか照会できない。しかし高度に科学が発達したこの世界なら、一国のみに制限された情報だけでも十分だった。

【鑑定】にはMPを消費するが、レベルが低くMPが少ない状況では一日にそう何回も使えない。

 特にレベルを上げる方法を知らなかったこの頃は、この問題を解決する手段がなかった。

 故に、個人デバイスで調べる方が遥かに安上がりだったのだ。

 幸い言語は英語にそっくりで、一般名詞もほぼ同じだった。

 固有名詞はたまに独特なものが混じっているが、デバイスで調べればある程度はすぐわかるので困らない。

 本来超常の現象である『スキル』。その代名詞とも言える【鑑定】は、科学技術に完全に敗北していた。


 もっとも、この使えない2つのスキルも、奪う対象すらない【スキル強奪】に比べれば遥かにマシであると言えるわけだが。


 ともあれ、注射の薬液の名前は忘れたが、医者と両親がどういう話をしていたかは覚えている。デバイスで検索して詳細も調べた。

 あの薬液に入っているマシンは目に見えないほど小型のもので、様々な機能があるらしい。

 有害なウィルスや細菌を白血球より先に見つけて駆除するだとか、外傷を負い出血した部分を血小板より先に塞いでしまうとか。さらに組織の再生を促進して怪我の治りを早くしたりもするらしい。

 病気にならず、怪我をしないという【超頑健】のメリットがいきなり半分くらい潰されている。

 それどころか、今のところデメリットしか得られていない。


 また、このマシンの機能のひとつに、個人の識別がある。

 前世で言うところの「マイナンバーカード」と「クレジットカード」を超高性能にしたような機能がある、らしい。

 この注射を打った人間は、どの店に行っても直接精算をすることはなく、店から出る際に商品とこの個人識別機能によって、自動的に請求が来るのだそうだ。

 さらに、追跡機能でもあるのか、都市内にいれば迷子になってもどこにいるのかすぐわかるらしい。

 他にも彼には理解できなかったが色々な機能があるらしく、この国で生活するのならこの注射は絶対必須であるそうだ。


 少年は自室でひとり絶望した。

 なぜなら、おそらく少年の【超頑健】は、いかなる注射針の貫通も許さないからだ。


【鑑定】で調べた【超頑健】の効果は以下の通りである。

・超健康:常に、健康状態を超えた超健康状態となる。

・物理完全耐性:『耐性貫通』効果を持たない物理攻撃ではダメージを受けない。

・魔法完全耐性:『耐性貫通』効果を持たない魔法攻撃ではダメージを受けない。

・状態異常完全耐性:『耐性貫通』効果を持たない状態異常にならない。


 医療用器具の注射針が耐性貫通効果なんて持っているとは到底思えない。

 つまり、彼が注射を打たれることはこの先も決してあり得ない。

 よしんば薬液を体内に取り込めたとして、そのマシンが機能している状態が「状態異常」と判定されないかも問題だ。

 もし状態異常だと身体に判断された場合、そのマシンが耐性貫通効果を持っていなければ【超頑健】に駆逐されてしまうだろう。

 仮に経口摂取型の薬液があったとしても、おそらくは無駄、ということだ。


 マシンの接種はこの都市では必須。

 接種を受けていない人間は『いないもの』として、スラムかどこかで隠れながらひっそり生きるしかない。


 少年は上流階級と思われる家庭に生まれ、愛情を持って育てられた。

 しかし上流階級であるからこそ、その何とかマシンを接種しない選択などあり得ない。注射が打てないなど、これまでに例すらあるまい。

 絶対に家族に迷惑がかかる。


 彼は長男であるが、2つ下の妹がいる。

 この国では男性だから女性だからという理由で家を継げないということはない。性差にはこだわらないのに家柄にはこだわるのかと、教育を受ける中で不思議に思った覚えがある。


 自分が転生したせいで──余分なモノを持って生まれてきてしまったせいで、家族に迷惑をかけるくらいならば。


 少年はこの日、夜を待って屋敷を飛び出し、街の外に広がるスラムへ飛び込んだのだった。





 ★ ★ ★


最初はプロローグとか書いてたんですが、後の方のワンシーンをここに持ってくるだけだったので、なら別にいらんか……と思ってやめました。

転生失敗不遇主人公……かと思ったか! てな感じのお話になります。


今のところ2章分40話ちょい、だいたい14、5万文字くらい書いてありますので毎日粛々と投稿していきます。


もし面白いと思っていただけたなら(第一話で言うことではないですが)

いいね、ブクマ、★★★、レビュー、SNS等での紹介、営業活動、売り込み、アシスタント、経理、買い出し、家事手伝い、送迎、一人焼肉のお供など、何でもいいのでよろしくお願いします。

よろしくお願いしすぎやろ……


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