呪われた王子は最強の獣医を目指す
さとの
プロローグ
この世で、一番ヒトを殺している生き物は、ヒトなんだよ。
幼いころにそんな言葉をどこかで知って、「人間は怖い生き物なんだ」というイメージが、心の奥深くに根を張った。小学校でいじめられた経験も、「ヒトが怖い」という感覚を強めた。
ヒト以外の動物は好きで、勉強もそこそこできた俺は、ヒトではない動物を診察する獣医になった。
街中で開業するような金もコネもなかったので、産業獣医――牛や馬などの家畜を診察する獣医になって、人づきあいもほどほどに、そつなく働き、ひっそりと暮らしていたのだが。
人生、総じて運が悪いのは生まれつきなのか。
日もとっぷり暮れた宵闇にまぎれ、道路の真ん中でうずくまっている子猫を見つけて、
「げっ、あれは轢かれるコースじゃん」
気づいてしまったのが運の尽き。助けないわけにもいかず、車が途切れたのを見計らって子猫を拾いあげ――。
たぶん、俺も疲れていたんだと思う。
ちょうど信号を曲がってくる車に気づいていなくて。
激しいブレーキ音と、身体に強い衝撃、続いて顔面からアスファルトに突っ込んだ。全身に激痛が走り、かすれゆく視界に、子猫が歩道の茂みに逃げ込む後ろ姿を確認して。
「よかった、アイツは助かったんだな」
そんなつぶやきと共に、意識は遠のいた。
次の更新予定
呪われた王子は最強の獣医を目指す さとの @csatono
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。呪われた王子は最強の獣医を目指すの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます