15:【前車之轍】

読み:ぜんしゃのてつ

意味:先人の失敗から学び、同じ過ちをしないように戒めること


 見栄え:★★☆☆☆(故事成語らしい字面だが車の轍だけではイケメン度は低め)

 残念度:★★★★★(慣用句の形で広まりすぎて真逆の意味にとられがち)

ギャップ:★★★★☆(現代のイメージとは真逆の意味というギャップがある)


解説:


 前回、前々回と未来のことは見通せないという意味の言葉を取り上げた。

 一方、過去のことは見えるのだから、せめて過去から学びを得ようという意味の言葉もあるので取り上げてみたい。



【前車の轍】とは、他人が既に犯した失敗から学び、同じ失敗を繰り返さないように自分の行動に生かすことである。


 これは先に通った車がひっくり返った跡を見て自分の車も同じ目に合わないようにその場所を避けたという故事に由来する故事成語である。



 もともとは失敗を避けるための言葉なのだが、現代では【前車の轍を踏む】の形で「先人と同じ失敗を繰り返す」という意味で使われることが多い。


 そのため、【前車の轍】単体だけを聞いても他人の失敗から何も学んでいないという意味にとられがちである。

 真逆の意味であって完全に誤用なので注意願いたい。



 また、由来を思えば間違えようがないはずなのだが【前車】を【前者】と間違えて覚えている人も多いかもしれない。


 確かに【前者】でも何となくのニュアンスは通じてしまいそうだが、人間の轍というと足跡のことになる。

 すぐ消えてしまいそうであり、後に続く者が参考にするのは難しいかもしれない。



 このように【前車之轍】は意味と漢字の両面で誤解されがちな点で残念度の高い言葉である。


 実のところ筆者自身も昔”前者の轍”と誤って書いてしまったことがある。

 轍は正しく書けたのにそっちで間違えるのかと何とも残念な気持ちになったのを今でも覚えている。


 どうか読者諸兄には筆者と同じ轍を踏まぬよう気を付けていただきたいものである。

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