母の面影(R15)
無意味の意味
母の面影(R15)
達磨女って話、知ってます?
女性を攫って腕と脚を斬り落として、首と胴体だけにして売り飛ばすって。
えげつないですよね、事実だったら。
まあ都市伝説的な話なんでしょうが。
話変わりますけど、家族写真って普通ありますよね。
うちにはないんですよ。
自分一人や兄弟での写真はあっても。
…もう勘付いてますね。
全部言わせてくださいよ。
子供の頃から叔母たちに世話をされて、まるで高貴な産まれみたいに扱われて。
不思議だったのは家の中に施錠されて入れない空間があったこと。
その部分には窓もないんでどうなってるか全然分からないっていう。
あと近所の子供と遊ぶにも相手の親がいい顔しなかった記憶があります。
…で、或る日に兄弟三人集められて。
ああ、行ってませんでしたけど三兄弟年子なんですよね。
そこで父親が言うんです。
「今から大事なものを視せる。これ一度切りだし絶対に他言は無用だ」
ぼくらも薄々分かってたんですよ。
あ、これはぼくが中学三年の時のことです。
扉が開けられて、もう一枚の扉を開いた部屋に彼女はいました。
まだ四十前だろうに痩せこけて四肢がない女性。
兄弟みんなで叫びましたよ。
「母さん、母さんなんでしょ!」って。
彼女は理解してるのかしてないのかも分からないような軽い微笑みでそんなぼくらを眺めてましたね。
「いいか、目に焼き付けておけよ」
父親が涙声で言ってました。
…酷い話でしょ。
彼女には以来逢ってないし、ぼくも実家を出てますからね。
うん、父親のことは責めないでほしいんです。
とある国に旅行してる時「裏の」見世物に使われてる「彼女」を大金で買い戻して苦労の上日本まで連れ帰ったそうですから。
何で他言無用のことを話すのかって?
父親が亡くなったんで実家は引き払うことになったんです。
あの件がどうなるのか分かりませんけど、誰かに聴いてほしくて。
月がきれいなせいなんでしょうかね。
母の面影(R15) 無意味の意味 @kokurikokuri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます