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この騒ぎで、一時間目の授業がなくなっちまったらしい。
オレと太陽は職員室に連れて行かれて、これでもかってくらい怒られる事になった。幸い、オレも太陽も大した怪我をしてなかったから、親が呼び出されたりするような事はない。でも物凄い怒られ方しちまった。
どうせ呼び出されたって、うちの親が来る事はないけど。かわりに年の離れた兄貴が飛んでくる。あの人達、今どこにいてんのか分からねぇからな。
ようやく教室に戻ったら、今度はサムが掴みかかってきた。
「本当に何考えてるの? 大変だったんだからね」
「ごめんごめん」
オレはサムに適当に謝ってから、横でニコニコしてた太陽を見た。
どうやら太陽は登校した瞬間から、いろいろ怒られてたっぽいんだよ。肩につく長さの髪は結えとか、スカートが短すぎるとか、人の話はちゃんと聞けとか、本当にいろいろ。怒られてるのを聞いちまったけど、面白いくらいスルーすんだぜ? 直す気は全くないらしい。
相変わらずさらさらの黒髪を垂らしたままだし、スカートも短いままだ。先生にも女子扱いされてキレてやがったぜ。面白れぇ奴。
ついでとばかりにオレも叱られちまった。髪が長すぎるから切れとか、ちゃんと制服を着ろとか。でもしょうがねぇじゃん。これ以上短く切っちまうと、クセ毛が悪化するんだ。くりんくりんの自分の頭が嫌になるよ、全く。
「サム、太陽だ」
「知ってるよ、大バカ」
サムはオレの事を軽く殴ってくると、困った顔をしてこっちを見た。
「俺はサム、よろしくね」
太陽は不思議そうな顔をして、サムの事をじっと見つめた。
「何人?」
「日本人だよ、このアホ」
大して知らない筈なのに、サムは太陽の肩を小突いた。
「二人のせいで、俺が尋問受ける事になったんだよ? 本当に大変だったんだから。分かってんの?」
「ごめんごめん」
今度は太陽が適当に謝った。
すっげぇ軽い謝り方するから、笑えてヤバかった。笑ってたら、サムに睨まれる。
「で、仲良くなっちゃったって訳?」
「オレ、こんなに強い奴とケンカしたの初めてだ。いっつも弱い者いじめしてる気になっちまって嫌だったんだけど、輝は強いから楽しかったぜ」
「オレも、こんな強い素人がいるとは思わなかったよ」
それはもう楽しそうに太陽は笑った。
「いっつも言われる」
クラスの連中から遠巻きに見られてるのは分かってたけど、どうでもよかった。多少はいつもの事で慣れてるからな。ここまで酷いのははじめてだけど。そりゃあれだけ暴れりゃ仕方がないとは思う。
隣りで笑ってる太陽も気にしてないみたいだ。ニコニコしながらサムを見上げる。
それにしても、本当に小さい。腕も細いし、背も低い。筋肉とは縁のなさそうな体をしてる。こんな体で本当に、あんな重い拳を向けてきたのかよ?
「面白い物が見られたからいいよ」
サムはそう笑うと、オレと太陽の肩を叩いた。
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