リビドーの聖戦
曖惰 真実
第1話 豊かな夢
部屋に散乱している丸められたティッシュには青年の欲望が包み込まれていた。ディスプレイには溢れんばかりの肌色が映し出され、検索結果には巨乳・爆乳と検索した履歴が表示されている。
「俺の欲望を包み込んでくれるのは巨乳とティッシュだけなんだよなぁ」
所謂、賢者タイムとされる精神状態で、ヌキオは僅かに残された性欲で優しさについて思いを馳せていた。そんな碌でもない事を考えていたら眠気が襲ってきた。
「田舎の貧相な大学には貧相な身体の女しかいないのかなぁ」
そんなこと無いとは分かっているが、彼が大学生活に求めていた"優しさの詰まったお姉さん”を見つけられないことを自分に納得させるため、そう結論付けるしか無かった。自分を満たしてくれる優しいお姉さんに憧れを抱いて学生生活を送る彼に、運命の出会いはやってこなかった。女性の、お店の人じゃない女性の優しさを夢に描く彼はまだ、女体に触れたことがない。画面の中のお姉さんだけが彼の理想に当てはまり、現実世界で満たされぬ夢を独り、ワンルームで消費する。
「今日も巨乳に包まれる夢をみるぞー!」独り言を叫び、眠った。
夢は自由だ。僕は今、女性の優しさの部分に囲まれ、ふわふわとした浮遊感に満たされている。夢の中では急に触っても、揉みしだいても怒られることはない。ただ物覚えのついた頃から、触れたことのない優しさは想像上の感触を、確証の無い柔らかさを与えるだけだった。
「ホンモノのおっぱい触ってみてぇ~、揉みしだきてぇ~」
そんなことを思い浮かべながらいつも通り夢を揉みしだいていると、ナニか、いつもと違う違和感があった。なんだこれ、ちょっと硬い?いつものふわふわじゃない。悪夢だ、今俺は悪夢に襲われているんだ!コワイ!優しい夢がみたい!
「いつまで揉んでいる、ヘンタイ!」
聞きなれない声で呼びかけられる。遂に頭でもオカしくなってしまったのかと思いながらも、目の前に理想の、豊かさの権化なる女性がいる一縷の望みに縋り、少しずつ目を開く。小さな足。僕の延ばされた右手は細いふくらはぎを掴んでいた。大きな夢とは真逆の小さな恐れを感じ取りながらも視線を上げていく。細く短い太もも、小さな尻、板、幼い後ろ姿。終わった。巨乳の夢をみて、夢遊病者の如く街に出て、今僕は幼女のふくらはぎを触って、いや、揉みしだいている。これから巨乳を追い掛ける大学生活から、むさくるしい筋骨隆々な犯罪者と共に監獄生活を送るんだ、考えるだけで背筋がゾクッとする。快感でない背筋の感触は不快なだけだ。せめて捕まるならもう一揉……
「そろそろ離せ、不快だ!」
眼前の少女の怒声に驚き、脊椎反射で手を引っ込める。放心状態の彼に少女は告げる。
「お前は大きなおっ、胸は好きか?」
「好きです!!!!!」
返事は手を引く速度よりも速かった。
「お前は豊かな胸の為なら何でも、」
「なんでもします!させ、ヤラせてください!!!」
「では私と契約」
「契約します!ハンコは持ってないから……ボイン!いや、拇印でも押させて頂きます!!!」
少女と青年の契約は結ばれた。
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