第4話 仇討ち
「さて、次の試合は、明後日から戦場入りが決まっている、アシュ――! ちなみに、皆さんに言っておくと、ここで負けても、死なないかぎり、負けない限りは回復魔法で治してもらえるそうです。今回は観客の皆さんに血を見せるためのなかなかに粋な計らいですねぇ、ま、死んだらそこでおしまいですけどね」
何が粋な計らい、だ俺からすれば面倒なだけだよ
「そして次の試合はあの最強の剣闘士ライトを倒し現在のコロシアムの頂点の君臨する、その名もローギー!」
「ローギー! あの子生意気な血の剣闘士をぶち殺しちまえ!」
「アシュ! あのローギーとかいうクズをぶっ殺しちまえ!」
「どっちでもいい血を見せろ!」
ライト……つまり師匠の仇、絶対に斬る、脱出の前の土産として死んだ師匠に捧げてやる!
「クックック、小僧、血の剣闘士とか言われてイキっているようだがな、絶対に俺に勝つことはできない、史上最強のローギー様にはなぁ!」
その声と共に体についた筋肉を見せつける、非常にきしょくわるい。
でもあいつが師匠を殺したんだ……だから俺はあいつを絶対に許さない!
「それでは――ラウンドスタート!」
「グオオオオオ!」
ローギーが大剣を上から叩きつける、俺はそれに対応して、斬る!
「――」
「フンヌ!」
防いだ! 流石に師匠に勝っただけあるか
「――」
「ハッ!」
俺の攻撃をああも簡単に避けるとは、だが問題ない、
体が少しづつ熱くなってくる、視界が広がってくる。
ここだな
「グオオオオオ! 俺の足の指が! おまえをぶっ飛ばしてやる! オオオオオオ!」
この程度なら避けながら斬れる
「――」
「グハァァァァ!」
「――」
「てんめぇ!」
ッ――――! 腹から血が出ている……いや、まだ戦える、
まだ死んでいない
「――」
「チッ! ハァァ!」
避けれる、
「――」
「しつこい! こうなりゃ奥の手だ! 複合魔法(炎+風)ファイアーストーム!」
放出魔法! それも複合属性!
「――ッ!」
「きいただろ! 俺の勝ちだ!」
まずい、体から血が、意識がもうろうとして……
いや! まだだ、まだ負けられない!
逃げられるチャンスを棒に振るか!
体がどんどん熱くなる、体の熱で火傷してしまいそうだ
どんどん視界がひらけていく、剣に何かが集まっていく
何をすればいいのかわかった気がした、少し空気が震え、コロシアムが静寂に包まれた気がした
観客の喉が詰まったように静まり返った。次の瞬間、俺の剣が閃いた
「
「ッ! アアアアアア! 俺が負けるはずがぁぁぁぁ――」
これで斬ることができた、俺の……勝ちだ
ローギーは叫びながら崩れていった
「なんと、なんとの大逆転ダァァァァ!」
「「「「「ウォォォォォォ!」」」」」
勝った……これで、まずい、もう、意識が……
~~~
「お疲れ様」
なんだ
「……」
「お疲れ様!」
「……」
う~ん
「お疲れさまって言ってんだろ!」
「あほかフェアラー、気絶してるだろ!」
「2人ともうるさい!」
「「あ! 起きた!」」
「ゴメスもフェアラーも静かにしてくれよ」
「わりぃ、わりぃ」
「ごめんって」
はぁ――でも師匠、俺、
引きづってたけど、きっと大丈夫。絶対に帝国のやつらは殺してやる、母さんのかたきだ。それに絶対に仲間は死なせない、強くなって、お母さんに笑っていい人生だったって言い切れるようになってやる
「お前たち、絶対に死ぬなよ」
「「なんだよ、急に」」
「いや」
「「だから何なんだよ!!」」
今日の夜は笑い声が牢に響いた、まさに幸福だった、この後に待ち受けることなんてこの時の俺は考えてすらいなかった
~~~
語り手:神(3人称)
少し時を戻そう
「ふっふっふ、これは面白いことになりましたねぇ」
「どうなされましたか? 閣下」
「いえ、少し魔法でアシュという名前の戦闘奴隷達の会話を盗み聞きしていただけだ、どうやら逃げ出そうとしているんだ」
「なんと! 殺させますか?」
「いや、殺すならばできるだけ利用してからのほうがいい。ただ、あれは才能の塊だ。それこそ陛下が恐れるくらいにな。かといって安易に殺そうとするのもよくない、運が悪いことに、アシュの両親が見つかったのは十分に力をつけた後だった、子供を殺さないことを条件に、父と交渉し、何とか奴隷にすることに成功した、そして父は我々が開発した、人口ウイルスで……コロリと逝った、そして母も、ここからは言わなくてもわかるな?」
「ええ」
「そして、あれが最後の生き残りだ、殺せないような強さを身に着けてしまったことだけが唯一の誤算、まああれを殺すのはあまりいいことじゃない、殺すにしても被害が出にくい戦場がいい、最悪、明日だけでも逃せばいい、運よく精神が壊れてくれれば一石二鳥とやらだ」
「一石二鳥、確か異世界の勇者が広めた言葉ですよね、1つの石を投げて2つの鳥を取る様子から、1つのことで2つのことを成し遂げるという意味の」
「ああ、君も自分と博識じゃないか」
「光栄です、閣下」
「まあ、我ら帝国は順調に目的を遂行しつつある。それに奴隷の命など駒に過ぎない、重要なのは国民だけだ。それでは明るい帝国の未来に向けて乾杯」
「乾杯」
「計画も順調に進んでいる、実にいい夜だ」
「あの計画ですか?」
「いや、君がまだ知らないものだ。そのうち話すさ」
「了解です」
こうして夜も更けていく、かけた月はまるで笑みのようだった、その笑みはまるでこの後来る不幸な未来を暗示しているようだった
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