火口の菌成人

　　龱龱龱龱

　龱　　　　龱🔥🔥

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　口内（こうない）angry（げきおこ）💢

龱　　　　　　龱

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　龱　　　　龱🔥🔥🔥

　龱　　　　龱🔥🔥

　　龱龱龱龱

　かんだ！

　いたい。

　しみる。

　吾輩（わがはい）は今（いま）、ちょっとした苦（くる）しみの中（なか）にいる。

　ところで、人（ひと）の體（からだ）というのは、その半分（はんぶん）が、細菌（さいきん）——小（ちい）さき友（とも）——から成（な）る。つまるところ、人（ひと）たる吾輩（わがはい）は、菌成人（きんせいじん）である。細菌（さいきん）たちは、人（ひと）の體（からだ）に住（す）まわせてもらうかわりに、微小（びしょう）な外敵（がいてき）の侵入（しんにゅう）を、防（ふせ）いでくれている。これは本当（まぢ）である。言（い）わば、善（よ）き寄生虫（きせいちゅう）のような存在（そんざい）である。本日（ほんじつ）の外敵（がいてき）は……

　　　食（た）べ物（もの）。

　もちろんそれは、本来（ほんらい）人（ひと）の栄養（えいよう）——血（ち）と肉（にく）と氣（き）——になってくれるはずの、あ（・）の（・）食（た）べ物（もの）だ。しかしながら問題（もんだい）は、その量（りょう）と質（しつ）の両方（りょうほう）にある。多過（おおす）ぎるし、人工的（じんこうてき）生化学的（せいかがくてき）魔改造的（まかいぞうてき）合成（ごうせい）されている。そういった自然界（しぜんかい）には元々（もともと）存在（そんざい）しない未知（みち）の物質（ぶっしつ）に直面（ちょくめん）する時（とき）というのは、人（ひと）の體（からだ）の持（も）つ消化（しょうか）・分解（ぶんかい）能力（のうりょく）では、誤用（ごよう）で言（い）うところの、役不足（やくぶそく）である。具体的（ぐたいてき）には何（なに）を食（た）べたのかと言（い）うと…………

　　　ポテチ。

　もちろんそれは（パリパリうす塩（しお）である）、恐（おそ）らく読者（どくしゃ）諸賢（しょけん）の想像（そうぞう）しているはずの、植物油脂（あぶら）ギッシュな薄切（うすぎ）り塩辛（しおから）ジャガタライモである。もちろん平常（へいじょう）であれば、適度（てきど）な油脂（あぶら）も、芋（いも）も、塩（しお）も、人（ひと）の體（からだ）には一定量（いっていりょう）必要（ひつよう）、あるいは善（よ）いものであるはずだ。しかしこの個体（こたい）の場合（ばあい）、世（よ）は飽食（ほうしょく）時代（じだい）、大量生産（たいりょうせいさん）の代償（だいしょう）かな、質（しつ）の悪（わる）い農薬（のうやく）を浴（あ）び、各種（かくしゅ）ミネラル削（そ）がれし精製塩（せいせいえん）に塗（まみ）れ、人體（じんたい）には異常（いじょう）に過剰（かじょう）の植物油脂（しょくぶつゆし）——パーム油（あぶら）の類（たぐい）だろうか——に浸（ひた）り、それ自体（じたい）は意味不明（いみふめい）の遺伝子組み換え（G・M）——ジェネティカリーにモディファイドな——芋（いも）、だったらしい。すると、せっせと消化（しょうか）や分解（ぶんかい）や合成（ごうせい）（部位（ぶい）によっては合成（ごうせい）もやっている）に勤（いそ）しむ胃（い）や腸（ちょう）などの消化管（しょうかかん）は、未知（みち）との死闘（しとう）重（かさ）なれば、疲弊（よわ）る。この疲弊（よわ）る、というのが生体電気的（エレキな）信号（シグナル）——それはフォース｛『スター・ウォーズ』（1977）｝のようなものである——となって、人體（じんたい）の伴走者（ばんそうしゃ）たる細菌（さいきん）——それはミディ＝クロリアン｛『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』（1999）｝のようなものである——へと、意思伝達（コミュニケーション）される。

　　　反乱（リベル）・抵抗（レジスタンス）開始（かいし）。

　それは、防御（ぼうぎょ）機構（システム）の作動（さどう）に始（はじ）まる。具体的（ぐたいてき）には、細菌（さいきん）たちが決起集会（だいしゅうごう）して、然（しか）るべき場所（ばしょ）に炎症（えんしょう）——今回（こんかい）の場合（ばあい）それは口内炎（こうないえん）——を起（お）こす。炎症（えんしょう）なんて嫌（いや）だ、口内炎（こうないえん）なぞ糞食（くそく）らえ、と思（おも）われるかもしれない。しかし炎症（えんしょう）には無駄（むだ）などない。大義（たいぎ）がある。どういうことか。

　口内炎（こうないえん）があると、食事（しょくじ）の度（たび）に（お節介（せっかい）：成長期（せいちょうき）の子（こ）どもやアスリートでもなしに一日三食（いちにちさんしょく）は多（おお）いだろう！）、腫（は）れの部位（ぶい）が痛（いた）くて不快（ふかい）であるし、腫（は）れを噛（か）んで更（さら）なる隆起（もりあがり）を見（み）せるのも御免（ごめん）である。美食（びしょく）満腹（まんぷく）の喜（よろこ）びはおろか、氣分墜ツ（テンさげ）である。ただ、となると、自（おの）ずと食事量（しょくじりょう）が減（へ）る。余程（よほど）の食（く）いしん坊（ぼう）か、苦痛快楽者（マゾヒスト）でない限（かぎ）りは。食事量（しょくじりょう）が減（へ）るからには、先（さき）に挙（あ）げた珍妙（ちんみょう）かつ悪質（あくしつ）悪量（あくりょう）な謎物質（ダークマター）の摂取量（せっしゅりょう）も減（へ）る。つまりは、細菌（さいきん）たちは集合（しゅうごう）しては肥大（ひだい）なる口内炎（こうないえん）を醸成（じょうせい）することにより、宿主（ホスト）の食欲（しょくよく）を即時（そくじ）減退（げんたい）、半（なか）ば強制的（きょうせいてき）に追加（ついか）毒素（どくそ）の侵入（しんにゅう）を防（ふせ）いでくれているのである。そして、その隙（スキ）に、人體（じんたい）は解毒（ぶんかい）に努（つと）めるのである。

「宿主（ホスト）さん、最近（さいきん）戸締まり（セキュリティ）が甘々（あまあま）なんじゃあないですか？」

「もぐもぐくちゃくちゃうるさいですねぇ！　お口（くち）チャックしないとぉ〜」

「毒（ジャンクフード）も休（やす）み休（やす）み食（く）え〜」

　そんな細菌（さいきん）たちの声（こえ）が、聞（き）こえてきそうである。食（た）べると苦（くる）しいのなら、暫時（ちょっと）食（た）べないでいてみる、という選択肢（せんたくし）を採（と）るのが賢明（けんめい）だろう。

　この現象（げんしょう）を善（よ）いととるか不都合（わる）いととるかは、宿主（ホスト）の価値観（かちかん）次第（しだい）であろうが、細菌（さいきん）たちの善（よ）かれと思（おも）っての行（おこな）いに、納得（なっとく）なくとも一定（いってい）の理解（りかい）は得（え）られるはず。

　もちろん、悪食（あくじき）とは別（べつ）な要因（よういん）からも、この反応（はんのう）は起（お）きうる。人（ひと）は、仕事（しごと）での精神的（せいしんてき）負担（ふたん）、人間関係（にんげんかんけい）、将来（しょうらい）不安（ふあん）などストレスの類（たぐい）から、胃腸（いちょう）を弱（よわ）らせると言（い）うが、それらもまた、ポテチの例（れい）と同（おな）じく、胃腸（いちょう）疲弊（ひへい）の信号（シグナル）が體（からだ）中（じゅう）を電流（でんりゅう）するのにかわりはない。するとやはり、細菌（さいきん）たちは胃腸（いちょう）を庇（かば）うようにして、胃腸（いちょう）よりも前線（まえ）の消化管（しょうかかん）たる口内（こうない）に、火炎障壁（ファイアウォール）を築（きず）くのであり、宿主（ホスト）は「痛（イッテェ）！」と叫（さけ）ぶのである。

　また加筆する（つけくわえる）なら、メンタルを負傷（ふしょう）しての暴飲暴食（ぼういんぼうしょく）が伴（ともな）えば、精神的（せいしんてき）にという抽象（ちゅうしょう）に加（くわ）えて毒（どく）という具体（ぐたい）物質（ぶっしつ）にも由来（ゆらい）するダブルパンチとなってしまうわけで、口内炎（こうないえん）の規模（きぼ）はより甚大（バースト）する。

　では、ここで、愚（おろ）かにも火口（かこう）の菌成人（きんせいじん）となった吾輩（わがはい）に今（いま）できる最速（なるはや）の対症療法（そのばしのぎ）を考（かんが）えてみる。

　　　塩（しお）。

　　　塩（しお）にNaCl（ナックル）ぶちかます。

　　「えーん😭」

　塩（しお）を単体（たんたい）で———当然（とうぜん）、ここでは塩（しお）というのは塩化（えんか）ナトリウムのことを言（い）い、塩化（えんか）ナトリウムは塩化物（えんかぶつ）イオンとナトリウムイオンから成（な）る静電（せいでん）陰陽（おんみょう）化（・）合（・）物（・）である、のが稚児（ややこ）しいのだが、どうかご容赦（ようしゃ）を——一摘（ひとつま）み、炎上（えんじょう）渦中（かちゅう）の口（くち）に含（ふく）む。それがいい。これは一見（いちげん）なれば、「おい、ここに来（き）てまた塩（しお）を摂（と）るのか、話（はなし）が撞着（ちがう）ぞ」と思（おも）われるかもしれない。しかしこれが効果（こうか）覿面（てきめん）なのである。

　炎症（えんしょう）部位（ぶい）が、蛞蝓（なめくじ）に塩（しお）、の要領（ようりょう）で、密圧差由来浸透（しんとうあつ）が発動（はつどう）、口腔（こうくう）粘膜（ねんまく）境界面（きょうかいめん）内外（ないがい）で具沢山（ぐだくさん）スープの溶質（ぐ）と溶媒（しる）の割合（わりあい）が平衡化（へいこうか）、汁過多（しるかた）の体内（たいない）から汁（しる）を吸（す）い出（だ）すようにして収縮（しゅうしゅく）。吾輩（わがはい）は口内炎辛苦（スカーレット・マウス）から一転（いってん）、浄化解放（カタルシス）へ。細菌（さいきん）たちは逝（い）くらか犠牲（ぎせい）になることだろう。言（い）うなれば、これぞ吾輩（わがはい）——加賀倉（かがくら）創作（そうさく）である、どうぞお見知（みし）り置（お）きを——流（りゅう）の、「敵（てき）に塩（しお）を送（おく）る」である。

　この時（とき）もちろん、塩（しお）は粗悪塩（そあくじお）でなく、良塩（りょうえん）を。塩（しお）は塩（しお）でも、先（さき）のポテチ塩（じお）は、ほぼ塩化（えんか）ナトリウムの塩辛単調（からいだけ）な精製塩（せいせいえん）であるからよくないのであって、母恵（ほえい）なる海水（うみ）に岩来（がんらい）含蓄（がんちく）さる多岐（たき）渡（わた）るミネラル——一一八（はっぴゃくじゅうはち）元素（げんそ）のうち、人體（じんたい）構成（こうせい）主要（しゅよう）元素（げんそ）たるCarbon（炭素）、Hydrogen（水素）、Oxygen（酸素）、Nitrogen（窒素）を除（のぞ）く必須（ひっす）元素（げんそ）群（ぐん）——の良平衡（バランス）かつ豊富（ボリューム）な、眞の塩（シンシオ）は、よいのである。

　ちなみにこれは余談（よだん）だが、塩（しお）の、一〇〇（ひゃく）瓦（グラム）当（あ）たり栄養（えいよう）成分（せいぶん）表示（ひょうじ）（パッケージ裏面（うら）によくあるやつだ）において、『食塩（しょくえん）相当量（そうとうりょう）』が低（ひく）い（ここでは六〇（ろくじゅう）から八〇（はちじゅう）瓦（ぐグラム）程度（ていど）のん）ものが、余計（よけい）にミネラル分（ぶん）を削（そ）がれていない良塩（りょうえん）である。なぜならその低（ひく）さが示（しめ）すのは、しょっぱい秘訣（ひけつ）の塩化（えんか）ナトリウム控（ひか）えめ、まろやか秘密（ひみつ）の他（ほか）ミネラル多（おお）め、であるからだ。

　よって、人（ひと）の體液（たいえき）の前駆体（ぜんくたい）液（えき）が海水（うみ）であると言（い）っても過言（かごん）ではなく（既存（きそん）定説（かせつ）たる進化論（しんかろん）は個人（かがくら）的（てき）には信（しん）じないが）、穢（けが）れなき海水（かいすい）を純粋熱な心氣持ち（ぴゅあぴゅあはーと）で干（ひ）上（あ）げた塩（しお）が人體（じんたい）に悪影響（あくえいきょう）するとは、とても思（おも）えない。

　　　ラスト添加物（てんかぶつ）——Besides.

　以上（いじょう）を、また別（べつ）に、皮膚炎（ひふえん）の類（たぐい）に応用（おうよう）するならば、塗薬（ぬりぐすり）による発疹（ぶつぶつ）治療（ちりょう）は、根本的（こんぽんてき）解決（かいけつ）にならない。それは、何（なん）らかの毒素（どくそ）を體外（たいがい）へ排出（はいしゅつ）しようと細菌（さいきん）たちがせっかく火炎燃焼（ファイア）しているというのに、態態（わざわざ）と毒素（どくそ）を體内（たいない）へ押（お）し戻（もど）しているだけであり、穴掘（あなほ）りと穴埋（あなう）めを定位置（ていいち）で強制（きょうせい）繰返（リピート）の拷問（ごうもん）である。そしてそれすなわち、慢性化（まんせいか）であり、ひいては、白衣的権威（口"ﾉ'ﾌ＞工ヲア）への通院（つういん）と言（い）う名（な）の定期（ていき）顧客（こきゃく）献上（けんじょう）である。

　　　今日（きょう）もどこかで

　　　細菌（さいきん）たちは、

　　　反乱（リベル）・抵抗（レジスタンス）している。

　　　人（ひと）は皆（みな）、

　　　細菌（さいきん）たちと一緒（いっしょ）。

　　　〈おれたちのたたかいはここからだ！〉

　※本稿（ほんこう）において「体（からだ）」という漢字（かんじ）の多（おお）くを「體（からだ）」としたのは、日本人（にほんじん）は骨（ほね）の豊（ゆた）かさを誇（ほこ）るべき民族（みんぞく）であると考（かんが）えるからである。

　※本稿（ほんこう）において「気（き）」という漢字（かんじ）の多（おお）くを「氣（き）」としたのは、日本人（にほんじん）は米（こめ）を空気（くうき）を吸（す）うように食（くら）う民族（みんぞく）であると考（かんが）えるからである。