カノッサの為のデウス・エクス・マキナ──The stories of someone.
ビスマス工房
第1話:まずは私の話を
私には、不思議な記憶がある。別の宇宙に行った記憶だ。それは本当に曖昧な、輪郭がぼやけた夢幻のようなものであり、自分でも本当にあったことではない、ただの空想だと考えていた。
五歳になったばかりの頃のことだ。ある人と共に宇宙を旅していた。その宇宙の恒星は電気で光る冷淡なもので、惑星や衛星は土ではなく金属で出来ていた。宇宙空間には魚のような生物が泳ぎ、豊かな自然を備えた星も存在していた。
その宇宙空間を、私は男の人と共に、長い旅をしていた。その男の人は、白い髪と肌、青色の瞳を有する、爬虫類のような顔立ちの背の高い若い男の人であり、手足の指が六本ずつあった。
男の人は戦闘能力がかなり高く、私が危険な目に遭った時や、危ない目に遭いそうな時には必ず助けてくれた。気付いたらその人を慕うようになっていた。
この記憶のために、私はかなり夢見がちな子供になった。常に物語を夢想した。いつも絵ばかり描いていた。しかし、この頃の私は悲しいお話しか作れなかった。
私は、関東のある片田舎で生まれ育った。父、母、兄二人、妹一人の六人家族だった。父は公務員であり普通の人間だったが、私の家族には一つだけ“秘密”があった。それは、私たちに生まれつき備わった“能力”だ。
母は様々なものを視たり聴いたりすることが出来たし、上の兄はヒーリングの能力を、下の兄はエクソシストの能力を、妹は動物や植物と話す能力をそれぞれ引き継いでいた。
私はというと、今にして思えば唯一、この母を超える霊能力を付与されて生まれたのだと思う。だが、私の能力は生まれてすぐに、母によって封印されてしまい、長い間、母は何も教えてくれなかった。
そして私は成長と共に次第に、数々の幻覚に悩まされることになったのである。幻視や幻聴、幻痛、幻味、幻臭。それらは常に私を苦しめた。何度かそれを、家族に訴えようとしたが、誰もまともに聞かなかった。
家族は私の苦しみをまともに聞かなかったばかりか、馬鹿にして笑うのが常であった。そして、私は自殺未遂を何度も繰り返すようになった。そしてある日、橋から飛び降りようとしたところで大人たちに捕まった。
そして精神科病院に入院したある日のことだった。その日、不思議な夢を見た。私は妹と共に家にいたのだが、玄関扉のチャイムが鳴り、妹は玄関に歩いて行った。私が玄関のドアを開けると、そこには二人の、背の低いレプティリアンが立っていた。
あなたがレプトマイアか。そう質問された私は、何とはなしに頷いた。今まで母からはレプティリアンについて聞かされていたが、それが夢に出てくるのは初めてのことだったので、呆気に取られていたのだ。
レプトマイアという単語は、聞いたことがなかった。後に、ラテン語で“小さき母親”を意味することを知ったのだが。
頷くと、記憶が曖昧になった。気が付くと朝になっており、何も覚えていなかった。
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